研究課題/領域番号 |
20K04401
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
高嶋 一登 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (30435656)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ソフトメカニクス / ロボットアーム / 形状記憶ポリマー / 可変剛性 / 人工筋肉 / 力覚センサ / 触覚センサ / 知能機械 |
研究実績の概要 |
本研究では、研究代表者が開発してきた形状記憶ポリマー(SMP)の温度による剛性変化を利用したロボットアームを発展させ、「全身の剛性と感度を可変のロボット」を開発する。3年計画の1年目である2020年度には、以下の(実施項目1)に着手した。 【実施項目1-1:SMPのみを用いたロボットアームの改良】これまで開発してきた個別の要素技術(人工筋肉、触覚・力覚センサ)とロボットアームの改良をした。例えば、等張・等尺試験によりSMPシートを用いた湾曲型空気圧ゴム人工筋の湾曲特性を調べた。従来のSMPを用いない人工筋と異なり、二方向に同等に力が発生可能であることが確認できた。 一方、SMPシートを用いた皮膚(触覚センサ)表面に凹凸形状を固定することで、対象物をセンサ表面でなぞった際のセンサ出力の変化を確認できた。例えば、測定したい対象物の形状に応じて、センサ表面にセンシングしやすい形状を固定することが考えられる。 SMPを用いた小型力覚センサでは、ばねやダッシュポットの数を増やした粘弾性モデルを用いた伝達関数モデルを提案し、測定したひずみから正確な力を算出できた。 さらに、SMPを用いた人工筋、皮膚、力覚センサを搭載した人間の腕程度の大きさのロボットアームを作製し、動作を評価した。人工筋を用いたロボットハンドをアーム先端に取り付け、物体の把持・持ち上げができた。皮膚を加熱することで上面に載せた物体に沿って変形し、さらに冷却することで、その物体を安定して保持できるように形状を固定できた。力覚センサによって、さまざまなゴムの圧縮剛性を計測できた。 【実施項目1-2:SMP以外の各要素技術の個別開発】これまでSMPを応用していなかったリンクにもSMPの応用を図った。その際、新たにジャミング転移現象を組み合せ、可変剛性リンクを設計・作製した。試作リンクの特性を評価し、提案したコンセプトの有効性を示せた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載のように、おおむね当初の計画通り、SMPのみを用いたロボットアームの改良、SMP以外の各要素技術の個別開発を進めることができたため。次年度以降の研究の基になる開発・基礎データの取得ができたと考えている。また、新たに開発したSMPとジャミング転移現象を組み合わせた可変剛性リンクの研究成果を基に特許も出願することができた。
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今後の研究の推進方策 |
「全身の剛性と感度を可変のロボット」の実現に向けて、本研究では、人間の腕程度の大きさのロボットアームを開発する。3年計画の2年目である2021年度には、「研究実績の概要」にも記載した(実施項目1)を引き続き、実施する。例えば、人工筋ではSMPシートの形状を変更することにより、湾曲角度の増大を図る。また、触覚センサでは、SMPシートの厚さを変えた場合や固定する凹凸形状を変更した場合のセンサ出力の変化を評価していく。力覚センサでは、提案した伝達関数モデルをさまざまな条件で評価していく。一方、2020年度には使用していなかった別の手法(形状記憶合金など)の追加、置き換えにより、さまざまな作業に対応できるようにするなど、大幅な性能向上を図る。 さらに以下の(実施項目2)にも着手する。 【実施項目2:項目1の成果を組み合わせたロボットアームの開発(2021~2022年度)】(実施項目1)で得られた結果を組み合わせたアームを作製する。特に、2020年度に新たに開発したSMPとジャミング転移現象を組み合わせた可変剛性リンクの組み込みを検討する。 さらに、そのアームを用いて新しいロボットの動き・用途を提案・検証する。具体的には、使用状況に応じて剛性・感度を切り替えながら、対象物の持ち上げ・保持などを行う。このとき、提案するロボットアームの利点、応用形態、具体的に必要な仕様などを明確にし、評価していく。
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