本研究では、研究代表者が開発してきた形状記憶ポリマー(SMP)の温度による剛性変化を利用したロボットアームを発展させ、「全身の剛性と感度を可変のロボット」を開発した。最終年度も、前年度に引き続き、以下の(実施項目1)、(実施項目2)を実施した。 【実施項目1-1:SMPのみを用いたロボットアームの改良】これまで開発してきた個別の要素技術(人工筋肉、力覚センサ)を改良した。特に、これまで手作業で行っていたSMP加熱用の電熱線の作製工程を数値制御加工に改良することで、電熱線間隔や加熱時の温度分布が均一になった。また、試作したSMPシートの引張・曲げ試験、さらにSMPシートを貼り付けた人工筋の等尺試験、湾曲角度測定を実施した。一方、力覚センサでは、片持ち梁構造に加え、両端固定梁構造の試作品についても評価し、どちらも温度によって感度や測定レンジを変更可能なことが分かった。 【実施項目1-2:SMP以外の各要素技術の個別開発】形状記憶合金(SMA)ワイヤとジャミング転移現象を用いた可変剛性リンクの特性を評価した。形状固定性能の評価実験では、長時間の負荷に耐えられることを示した。さらに、構造変更により感度可変な力覚センサを新しく開発し、センサ先端に加えた力と検出されるひずみの関係が変更可能なことを示した。 【実施項目2:項目1の成果を組み合わせたロボットアームの開発】SMAワイヤとジャミング転移現象を用いた可変剛性リンクをロボットアームに取り付け、対象物の形状に応じてリンク形状を変更することによって、ピックアンドプレース時の位置決め精度の向上・可搬重量の増加を確認した。 研究期間全体の研究成果として、査読あり雑誌論文6件(うちオープンアクセス5件)、学会発表18件(うち国際学会2件、招待講演3件)、産業財産権2件など、「全身の剛性と感度を可変のロボット」実現のための技術を蓄積することができた。
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