研究課題/領域番号 |
20K04402
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
李 根浩 宮崎大学, 工学部, 准教授 (60595776)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | パドル式推進機 / 旋回遊泳 |
研究実績の概要 |
現在の水上移動機構は、騒音問題や接触事故による水生生物を傷つける恐れがあるため、フィンや遊泳脚を用いた生物模倣の推進機構が開発されている。しかしながら、これらの機構は旋回といった細かな動きを実現することが困難であるといった課題が挙げられる。 そこで、旋回といった細かな推進を可能にする新たなモデルの提案とそれに基づく試作機の開発について研究を行った。 パドルでの旋回動作を可能とするためにはパドルの表面積を変化させる必要があると考えられ、カモメの水泳時の蹼の開閉動作に注目する。ここで、水を掻く動作をパワーストローク、水を掻く動作に移るまでの動作をリカバリーストロークとする。カモメは、パワーストローク時に蹼を広げて前に進む力を確保しする。また、リカバリーストローク時には蹼を閉じることで表面積を小さくし水の抵抗を減らしている。これらの動作を取り入れた、旋回動作を可能とするパドルをダックパドルと呼称し、この開発を行った。モデルの有効性を検証するために試作機を開発した。実際の試作機のパドルの動きを撮影し、動作の定量的な評価を行った。また動作検証の方法として、一つ目の実験では足を同時に動作させ、二つの実験では足を交互に動作させ、その後、実験1と実験2でのパドルの開閉タイミングや足全体の動かし方を組み合わせた三つ目の実験では旋回動作を検証した。実験を通して、いずれの実験においても提案する機構を持つパドルで実験機を動かすことができることを確認した。 提案したモデルによって前進や旋回動作の有効性が確認された。しかしながら、誤動作を無くし、正確なパドル動作を生成するためにフィードバック制御が必要であると考えられる。各パドルにおいて個別なアクチュエーターを使用したが、アクチュエーターを減らし、軽量化及び小型化を目指したい。将来的には浅瀬や岩礁、サンゴ礁などの環境下でも、展開可能になることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
推進力の向上、動作の安定化、より細かい旋回動作を可能にするパドルの試作機を開発し、前進や旋回動作の有効性が検証実験を通して明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
1~2年次に得られた結果に基づき、水中ロボットにおける推進ユニットについて寸法、形状を決定する。推進ユニットの試作機を開発し、実際に前進と旋回といった一連の動作を制御することで、水中ロボットの推進ユニットとして動作生成の有効性を検証する。推進ユニットの開発は、3つの段階に分けて行う。 ① 推進ユニット(1号機)は完成後、水に入れない状態で推進ユニットが生成する一連の動作のパドリングを解析と検証する。 ② 推進ユニット(2号機)、水上用の浮きを備えつけ、水面に浮いた状態で前進と旋回といった一連の動作生成について評価実験を行う。これによって推進ユニットが水中で実際に推進力を生み出せているか検証する。 ③ 提案した推進モデルと推進ユニット(2号機)が生成したパドリングを比較と解析を行う。この結果に基づき、性能の改善のために、必要があれば逐次改良し、水中ロボットの推進本機としての性能向上を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末購入依頼した物品が見積もりより値下げとなってしまった。 残高は、次年度(最終年度)の実験用消耗品代として活用する予定である。
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