研究課題/領域番号 |
20K04403
|
研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
内田 敬久 愛知工業大学, 工学部, 教授 (20367626)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | モジュールロボット / 探査ロボット / 自動脱着 / 柔軟関節 / ジャミング転移 |
研究実績の概要 |
本研究では、柔軟関節を有する狭隘空間探査モジュールロボットの開発を目的としている。本目的を達成するため、研究では「柔軟関節を有する小型モジュールの設計製作」、「分離接続のためのセンシングシステムの設計製作」、「形態変更を伴う移動方法の提案」の3つの重点項目を置き進めている。そこで、まず、柔軟関節を有する小型モジュールの設計製作を行った。 柔軟関節を有する小型モジュールの設計において、接続機能を持つモジュール柔軟関節部分の設計が開発の最重要課題となるため、その機構について検討を行った。求められる要件は、接触対象物の形状に合わせて変形すること、関節としての強度をもつこと、制御により硬さを制御することである。そこで、硬さの制御を実現するため、ジャミング転移を用いる。ジャミング転移とは、風船のようなゴム状の袋に粉体を充填し、その内部の空気量を制御することで、加圧時は粉体が空間を自由に移動できるため柔らかく、減圧時は粉体同士の摩擦により固く剛性を変化させることが可能である。一般にジャミンググリッパとして形状の異なる軽量物を掴むために用いられており、これを本研究では接続機構として応用している。接続機構として使用するため挟持型接続機構を設計試作した。これは、ジャミンググリッパを2つ用いて対象物を挟み込み接続する形状となっている。挟持型において、単一のグリッパより把持力の向上を実現した。しかしながらロボットに搭載するには機構の大きさを小さくする改良が必要であることがわかった。また、グリッパ内部の構造を多層型にすることでジャミング転移の問題点でもある粉体の偏りによる把持力の低下を抑える機構を設計製作し、その有効性を確認した。 以上より、柔軟関節の試作及び評価を行い、小型モジュールの設計のための基本データを蓄積できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の進捗は、計画よりやや遅れている。柔軟関節を有する小型モジュールの開発において重要な柔軟関節部分の機構設計と制御設計の2項目を重点項目として位置づけ研究を進めてきた。以下項目ごとの進捗状況を示す。 機構設計において、柔軟関節を実現するためジャミング転移による剛性変化を利用した接続機構を提案し、試作した機構により有効性を評価した。目標とする把持力を達成することが大きな課題であるため、挟持型および多層型の2つのアプローチから試作機を設計製作した。ジャミング転移による接続機構と対象物の接続方向や膜内圧力と把持力の関係性について実験的に評価を行った。把持力の向上はいずれのアプローチでも得られ、モジュールの予定重量である2kgの把持に耐えることができることを確認した。機構の小型化と接続対象物の形状の評価が残された課題である。 制御設計において、ジャミング転移では膜内の圧力を制御することが必要であるため、配管及び圧力制御システムの設計を行った。ロボットに搭載予定であるマイコン、圧力センサと真空ポンプにより把持力制御システムを構築した。試作した柔軟関節の機構に実装し、リアルタイム制御を実現した。接続の有無を判別すためのセンサシステムやバルブやポンプの小型化およびロボットへの実装が残された課題である。 また、モジュールに搭載予定のセンシングシステムについては、障害物検知、音源推定を個別に構築している。 以上より柔軟関節の機構設計及び制御設計は、計画通り進んでいる。しかしながら当初予定していた小型モジュール全体の設計製作には至っておらず、進捗が遅れている状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
研究の進捗がやや遅れているため、モジュールロボットの製作、センシングシステム、移動制御方法の3つの研究項目を並行して進める。 開発したジャミング転移を用いた柔軟接続機構を搭載した対向2輪型モジュールロボットの設計製作を行う。すでに研究室で開発しているモジュールロボットの電気設計及び制御システムを改良し使用することで移動機構の設計に注力し開発期間の短縮を目指す。また、分離接続を可能とするために実装するセンシングシステムの設計製作を行う。モジュールの判別・位置・姿勢測定のためのカメラやLiDARについては、研究室ですでに開発し所持しているロボットによりモジュールロボットの開発と並行して評価を行う。機械学習による接続対象ロボットや障害物の検知、地図生成を行う。移動制御方法は、単一モジュールでの移動時の柔軟関節を用いた柔軟関節ガイドを用いた移動方法について先行して検討する。これには令和2年度に試作した接続機構を用いる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、使用予定であったモジュールロボットの試作開発において、柔軟関節部分の設計製作評価が完了しなかったため、モジュールロボット本体の製作費の一部が支出されなかったためである。このため、使用計画としては、翌年度分として請求した助成金とともに次年度において計画通りモジュールの開発費として予定している。また、研究発表を予定した学会がweb開催等に変更になったため、支出がなくなったためである。次年度以降精力的に発表および研究調査を行う予定である。
|