インバータ励磁下での鉄損推定法を確立するためには、マイナーループの推定精度の向上と異常渦電流損の推定手法の確立が必要である。 プレイモデルによるマイナーループの損失推定精度を検討することを目的に、渦電流の影響をほぼ無視できる準直流的な磁場周波数10mHz程度でのメジャーループの測定系と直流偏磁化のマイナーループの測定系を構築した。この測定系で測定した0.05~1.6Tの範囲で0.05T毎のメジャーループ群を用いてB入力プレイモデルを構築し,直流偏磁下におけるヒステリシスループのヒステリシス損の推定精度の検討を行った。直流偏磁下におけるヒステリシスループの磁束密度に過渡現象があること,また,その過渡現象によるヒステリシスループの変化をプレイモデルでは精度良く表現できないことを明らかにした。高磁束密度領域では,磁束密度の変化に対して磁場の変化が大きくなるため,メジャーループ群の振幅間隔を小さくする必要があることを示した。 3レベルPWMインバータ励磁下の無方向性電磁鋼板の鉄損を評価するために,測定試料や測定回路に依存することなく任意のインバータ励磁波形で試料を励磁できる測定系を構築した。インバータ励磁下の鉄損測定結果と,プレイモデルによりヒステリシスを考慮した1次元有限要素法によるヒステリシス損+古典的渦電流損解析結果との比較を行い,変調度の違いが異常渦電流損に及ぼす影響について調査した。その結果,変調度が小さくなると古典的渦電流損は増加するが異常渦電流損はほぼ変化しない結果が得られた。本研究では,無方向性電磁鋼板35A360に励磁周波数60Hzでキャリア周波数を2.5kHz,磁束密度振幅を0.5Tとした場合の一例のみの検証であるため,様々の励磁条件下での確認が必要である。さらに,ヒステリシス特性を考慮した1次元有限要素法による損失推定精度の検証は今後の課題である。
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