研究課題/領域番号 |
20K04412
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
安藤 芳晃 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (30323877)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ULF帯電磁波 / 地殻内伝搬 / WLP-FDTD法 / ULF電磁放射 / 地震 |
研究実績の概要 |
Douglas-Gunn(DG)アルゴリズムに基づくWeighted Laguerre Polynomial - Finite Difference Time Domain (WLP-FDTD)法の効率的解法について、精度良く求めるためのパラメタのチューニングを行った。DGアルゴリズムは摂動項を取り入れることによる誤差が生じるが、特に本研究で行う波源からの距離が波長に比べて極めて短い場合に誤差が大きいことが分かった。これを解消するためには、WLP関数の伸縮を決めるスケールパラメタを大きくとり、また結果として展開次数を多くすることで誤差を軽減できることが判明した。特に、大気を含む導電率が小さい媒質が存在することでスケールパラメタを数千、展開次数を数十万ととる必要があることが分かった。これらについては計算量が多くなるものの、並列化によって計算時間は短縮できるので大きな問題ではないと言える。 また開発したWLP-FDTD法を用いた地殻変動に伴う電磁放射の検討であるが、2次元解析で引き続き行っており、これによって電磁放射を引き起こす波源電流強度が地震の規模(マグニチュード)と相関をもつことが分かった。11のイベントについて解析を行い、9のイベントで良い相関が得られたと言える。精度よいシミュレーションのためにはいくつか克服すべき点があった。一つは吸収境界条件の開発であり、Perfectly Matched Layer (PML)だけでは低周波側での吸収性能が悪いことが判明した。低周波数でも性能よく動作する「不均一メッシュ+PML複合吸収境界条件」を開発した。克服すべき点のもう一つは地下導電率構造のモデル化であり、現時点で最も広範囲で精度のよいグローバル導電率モデルを導入し、この不確定性をカバーできるシミュレーションを確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題の一つである、WLP-FDTD法に適した吸収境界条件については開発済みである。もう一つの、3次元シミュレーション法もほぼ開発ができており、簡易にシミュレーションができるようなプリプロセス部分を補完する予定である。また、確立したシミュレーション法を用いた電磁放射の検証は2次元で十分な知見が得ており、3次元問題に展開できる段階に来ていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
WLP-FDTD法を用いた電磁場シミュレーション法については、地殻内電磁放射に適用しやすいようなプリプロセス部分を補完する予定である。これを用いて地殻変動に伴う電磁放射の検証を引き続き行ってゆくが、3次元構造の場合は波源電流の向きの自由度も高く、様々なケースを考慮して波源電流強度推定を行ってゆく。これらを考慮しながら2次元解析と同様の波源電流強度-マグニチュードの相関を3次元で検証してゆく予定である。また、発展的に電離圏の影響についても考慮してゆきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
シミュレーションのプリプロセス部分の開発が終えてから計算機の選定を行う必要があり、現在、その部分の開発を行っているためである。開発が終え次第、選定して使用する。
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