本研究では、SiC-JFETとSiバイポーラトランジスタのカスコードスイッチをフォトカプラーによって光パルスで駆動するスイッチングデバイス(Optically driven cascode switch:ODCS)を提案した。ここでカスコード中のSiバイポーラトランジスタとフォトカプラーの2次側のフォトトランジスタをダーリントン接 続して実質的にバイポーラトランジスタを駆動している。この光駆動SiCカスコードスイッチを用い、ハーフブリッジインバータ回路を試作した。同インバータ回路を動作させたところ以下の課題が顕在化した。 課題1:ODCSのターンオン動作時に、非アクティブの他アームのODCS中のバイポーラトランジスタの蓄積電荷が放出されて、過電流が流れる。これがスイッチング損失を増大させる要因となる。 課題2;出力電流(負荷電流)が比較的小さいゼロクロス付近においてODCSのターンオフ遅延時間が36マイクロ秒と非常に大きい。 課題1の解決策としては、あるアームが非アクティブ期間ではそゲートには信号を入力しない調整回路を信号発生部に組み込んだ。また課題2の解決策はODCSのバイポーラトランジスタのベースエミッタ間にシャント抵抗を挿入し、抵抗値を調整することによりODCSのターンオフ時間とオン抵抗の最適化を行った。これらの結果として、電源電圧40V、変調周波数100Hz、キャリア周波数8.5kHz、デッドタイム10μs、L負荷(0.3mH)の条件において、電力変換効率70.7%の結果が得られた。現時点でキャリア周波数および電源電圧は低いため、今後はトランジスタの放熱を工夫し、性能向上を図る予定である。
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