研究課題/領域番号 |
20K04420
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
高山 聡志 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50613551)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | P2P電力取引 / 太陽光発電 / 電圧制御 / 入札モデル / マルチエージェント / 強化学習 / 数理計画法 |
研究実績の概要 |
本研究は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度対象外となった需要家を対象としたP2P電力取引システムについて、配電系統の物理的制約を統合したP2P電力取引システムの開発と、市場参加者の入札戦略について強化学習を用いた入札価格決定手法の開発が目的である。 本研究では、P2P電力取引の実配電系統上での運用可能性を評価するとともに、強化学習を用いた入札行動モデルにより実際の入札状況に近いシミュレーション環境を構築することで,電力システム運用・制御と電力市場を介した経済性について統合的に評価可能なシステムを構築し,より現実に即した取引システムの設計理論を展開する。 2020年度は、(1)配電系統の物理的制約を考慮したP2P電力取引シミュレータの開発及び(2)P2P電力取引参加者の入札行動のモデル化について検討を行なった。(1)では、シングルプライスオークション形式に基づく市場取引システムと配電系統の電圧制約を満たすための太陽光発電出力抑制量最小化を達成する数理計画モデルを構築し、これらの統合モデルを用いて市場参加者の利益評価を行った。また、(2)では、強化学習の一手法であるナッシュQ学習を用いた市場参加者の入札行動決定手法について開発し、利益性・公平性の観点から提案する入札行動を評価した。この結果、市場参加者が自身の利益向上を目的に入札するQ学習モデルに比べ、利益性・公平性の向上が確認できた。加えて、強化学習の報酬関数に行動経済学で提唱されているプロスペクト理論を適用した入札モデルを開発し、入札に伴うリスクを考慮した入札価格決定モデルを構築した。 これらの結果については、2021年度の学会にて発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は(1)配電系統の物理的制約を考慮したP2P電力取引シミュレータの開発及び(2)P2P電力取引参加者の入札行動のモデル化を予定していた。これらは2021年度も引き続き検討を予定しており、(1)ではシミュレータの実装が概ね完了している。(2)では入札行動のモデル化に加えて利益性・公平性を目的とした入札価格決定モデルの検討も進んでおり、当初の進捗予定に比べ先行的に検討できている事項もある。以上から,初年度は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度では、当初の計画通り(1)配電系統の物理的制約を考慮したP2P電力取引シミュレータの開発及び(2)P2P電力取引参加者の入札行動のモデル化を引き続き検討を進める。(1)では、様々な配電系統モデルを用いて提案手法の汎用性を確認するとともに、強化学習エージェントを考慮した入札行動の学習モデル適用評価についても検討を進めたい。(2)については、ナッシュQ学習の拡張であるNash-DQNの適用検討・評価、市場参加者の増加、プロスペクト理論のパラメータ変化に伴うエージェントのリスク嗜好に関する評価を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍のため、学会が全てオンラインとなったこと、東京理科大学との打ち合わせがオンラインとなったことにより旅費使用がなかったことが次年度使用額が生じた理由である。2021年度についてもおそらくコロナ禍で学会がオンラインのケースが増加すると考えられるため、オンラインミーティング環境の整備及び当初参加予定のなかった国内外の会議へ積極的に参加し、学会発表及び最新研究調査のために会議参加費として使用する予定である。
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