研究課題
雷インパルス電圧発生器に補償回路が組み込まれた場合の発生波形が現行のIEC 60060-1:2010に記載されたアルゴリズムでは1)正しい波形パラメータの評価ができないことを明らかにする,2)その原因を解明する,3)前項で明らかにした問題点を解決した新しいアルゴリズムを提案する,4)新しいアルゴリズムの有効性を確認する。以上の4点を研究課題として取り組んだ。具体的には4)では研究者らの使っている600kV雷インパルス電圧発生器に10nFの容量性負荷が繋がれた場合を想定し,対応する補償回路を組み込んだ等価回路の発生波形について検討した。1)については,正しい波形パラメータ評価が行われると考えられる旧規格(IEC 60060-1:1989)で計算された波頭長に比べ,現行規格で計算された値は3.4%も大きなものとなり,研究者らの見通しが正しいことを確認することができた。2)については現行規格では基礎波形として二指数函数を用いるため,波形の開始時の傾きが0であることを忠実に記述できないことを明らかにした。3)については,出力波形の伝達函数(有理多項式)の分母が六次式で与えられ,二指数函数に対応する二次式と大幅に異なる。重畳振動を含みt=0における傾きが0となる四次の多項式(異なる負の2実根と実部が負である一組の共役複素数を根に持つ)を分母とする伝達函数に対応する波形を新しい基礎波形として使い,その他の手続きは現行規格に従うことの妥当性を明らかにした。4)に関しては,提案する基礎波形を用いた波形パラメータアルゴリズムの一部として使うことにより,計算された波頭長の値は旧規格で評価される値と0.2%以内で一致することを明らかにした。このことにより,研究者らの提案するアルゴリズムは現行規格の欠陥を解消するものであることを明らかにした。
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