研究課題/領域番号 |
20K04426
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
飯野 穣 早稲田大学, スマート社会技術融合研究機構, 主任研究員(研究院准教授) (80563238)
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研究分担者 |
林 泰弘 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40257209)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分散型エネルギー資源(DER) / エネルギーネットワーク / 協調制御 / エネルギー融通 / 調整力制御自由度 / 特徴量抽出 / エネルギーデータ / エネルギーモデル |
研究実績の概要 |
本研究では、エネルギーデータを活用したデータ分析×需要家エネルギーモデル技術による「ハイブリッド分析手法」の確立に向け、①特徴量抽出アルゴリズム,データの選択的利用、②データとモデルの連携推定手法、③グラフ理論を用いたエネルギーネットワークによる構造化モデル、の各テーマに対する研究を多角的に進めている。これまで「需要家」と位置付けていたエネルギー要素(発電設備、変換装置、負荷など)を、分散型エネルギー資源DER: Distributed Energy Resourceと再定義し、その挙動のモデル化と制御系設計の研究に注力した。その結果、本研究テーマの基礎検討段階として、以下の主要成果を得た。 ・DER群の個別制御により、面的なエネルギー性能改善(省エネ、省CO2、省コスト、逆潮流抑制、負荷平準化など)のポテンシャルを評価した。(テーマ③) ・前項研究を発展させ、DERの個別制御から近隣との協調制御、群制御に発展する段階でのエネルギー融通による性能改善効果を定量評価し、エネルギーネットワークの最適サイズが10ノード程度であることを突き止めた。(テーマ③) ・DERの調整力制御自由度を時空間の中での可制御軌道という表現で定義し、汎用的なDER制御方式を定式化した。(テーマ③) ・エネルギーの発生、蓄積、消費を司るDER群の挙動が、物理制約条件や外部環境パラメータの周期性等から、数種の代表パターンに限定できることを突き止め、特徴量抽出と予測制御を組み合わせたDER制御手法を提案した。(テーマ①②) これらの検討から、エネルギー要素(DER)の一般的モデル化と制御システムの枠組み、その相互作用(エネルギー融通)が形成するエネルギーネットワークの規模と性能の関係、個々のDERの挙動の代表パターンを特徴量抽出することによる制御方式の情報集約の可能性、などを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2020年度は、特に「特徴量抽出とデータの選択的利用」、「エネルギーネットワーク」の研究に注力し、以下の成果を得た。 [1] 飯野、林:需要家EMS群と協調した地産地消型エネルギー・環境マネジメントシステムの提案と評価、第39回エネルギー資源学会研究発表会(2020年7月)では、DER群の個別制御により、面的なエネルギー性能改善(省エネ、省CO2、省コスト、逆潮流抑制、負荷平準化など)のポテンシャルを評価した。 [2] 飯野、林:分散型エネルギー資源の相互エネルギー融通による環境価値の評価、第37回エネルギーシステム・経済・環境コンファレンス(2021年1月)では、前項研究を発展させ、DERの個別制御から近隣との協調制御、群制御に発展する段階でのエネルギー融通による性能改善効果を定量評価し、エネルギーネットワークの最適なサイズが10ノード程度であることを突き止めた。 [3] 飯野、林:可制御軌道に基づく分散型エネルギー資源アグリゲーション制御、第63回自動制御連合講演会(2020年11月)では、DERの調整力制御自由度を時空間の中での可制御軌道という表現で定義し、汎用的なDER制御方式を定式化した。 [4] 飯野、林:エネルギー管理システムの計画軌道パターン学習による簡易予測制御方式の検討,SICE MSCS2021(2021年3月)では、エネルギーの発生、消費を司るDER群の挙動が、物理制約条件や外部環境パラメータの周期性などから、数種の代表パターンに限定できることを突き止め、特徴量抽出と予測制御を組み合わせたDER制御手法を提案した。 上記検討から、エネルギー要素(DER)のモデル化と協調型群制御、相互作用(エネルギー融通)のエネルギーネットワーク、DER挙動代表パターンの特徴量抽出、などの個別解析手法を確立し、今後の「ハイブリッドモデル分析」手法研究に向けた基礎検討が整った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、エネルギーデータを活用したデータ分析×需要家エネルギーモデル技術による「ハイブリッド分析手法」の確立に向け、①特徴量抽出アルゴリズム,データの選択的利用、②データとモデルの連携推定手法、③グラフ理論を用いたエネルギーネットワークによる構造化モデル、の各テーマ研究を並行して進めている。2020年度は、基礎検討段階として「特徴量抽出とデータの選択的利用」、「エネルギーネットワーク」に関して先行的に多くの成果が得られ、当初の計画以上に研究を推進できている。今後は、本研究の主題の「データとモデルの連携推定手法」についても注力していく。 また、これまでのエネルギー利用・消費のみの「需要家」視点から、太陽光発電設備や燃料電池などの発電源を有する「プロシューマ」視点への拡張が必要と認識し、発電源、蓄積装置、変換装置、負荷などの各種エネルギー要素を、分散型エネルギー資源(DER)として再定義した。また、それらの価値を「省エネ」だけでなく「省CO2」、「省コスト」、さらには「逆潮流低減」などの地産地消率、「調整力」などの配電系統への貢献度、と多角的価値で捉える必要性を認識した。よって、今後の研究方針として、多種多様なDER群による多価値の評価指標を前提としたエネルギーネットワークモデルの理論構築に拡張していく。 他方、エネルギーデータ活用の視点でのデータ分析手法の研究では、当初、ビルなどの高圧需要家を想定したが、需要家タイプによりばらつきが大きいことが判明した。他方、均質で豊富なデータにアクセスでき、分析手法の評価がしやすい低圧需要家エネルギーデータに注目した。今後は、手法開発・評価の手段として、低圧需要家データも対象に含めて、分析、評価を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費については、2020年度は、当初予定していた分析対象のエネルギーデータ収集が、コロナ禍の影響で遅延したため、それらの大規模データ分析作業に用いる計算機システム(PC)の要求仕様が定まらず、その購入を保留とした。2021年度は、分析対象エネルギーデータの収集の見通しが得られたため、そのデータ量、必要分析作業量が定まり、本研究で当初計画していた仕様の計算機システム(PC)を購入の予定である。 旅費については、2020年度は、参加を計画していた国際学会がすべてオンライン開催となったため、旅費が必要なくなり、その分が2021年度へ繰り越しとなった。2021年度は、国際学会の現地開催が再開次第、これらの旅費を活用する予定である。
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