研究課題/領域番号 |
20K04427
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
廣塚 功 中部大学, 工学部, 教授 (20228844)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 誘導モータ / 回転子 / 高調波 / テンソル解析 |
研究実績の概要 |
誘導モータ(以下,IMと略記)の回転子バーに流れる電流の測定を行った。回転子のバー電流は,IMの特性に直接関与するものであり,出力および損失,さらには振動・騒音の発生状況を検討する上で極めて重要であるが,実測例は無く,当該研究は,従来推測でしか無かった回転子電流を実測しようとするものである。 2021年度は,アウターロータ形IMの回転子を固定し,固定子を回転できる構造とした試作IMを用い,回転子のバー電流に対する基礎的な実験を行った。回転子バー1本をエンドリングから切り離し,分流抵抗を入れ,その分流抵抗の両端の電圧を測定した。この場合,IMとしては,分流抵抗の抵抗値がバー1本の抵抗よりはるかに大きいため,バー1本が切れた状態と同等となるが,多くの文献から,バー1本が切れた状態でのIMの特性は,切れていない特性とほとんど同等であることが分かっている。バー電流(厳密には,回転子バー1本の誘起電圧)測定の結果,非常に多くの高調波電流が回転子バーに流れていることが明らかになった。また,回転子の基本波電流(滑り周波数成分)とIMのトルクとの関係,回転子バー電流の高調波成分の分析結果を得ることができた。例えば,滑り0の場合,固定子の第1次スロット高調波は1080Hzに現れるが,滑りを変えると,滑りに関わらず1080Hz一定となる成分,滑りに比例して周波数が下がる成分,滑りに比例して周波数が上昇する成分などを実験的に捉えることができた。その理由や発生の特徴などについては更なる検討を要する。また,テンソル解析法を用いた解析にも着手した。 新型コロナの影響で実験の進み具合は当初予定より遅れているが,着実に成果を出しつつある。実験条件をさらに検討する基礎的データも得ることができ,2022年度以降の研究の礎となる成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験を行うには,複数人の協力が欠かせないが,新型コロナの影響で,密集を避ける工夫がうまくできていなかった。現在は,それも解消し,研究実験を実施できる状況にある。また,第2試作機として,回転子を真鍮バーとして,ロゴスキーコイルで回転子バー電流を直接履かれる構造の試作IMの設計・製作に,設計・製作会社のコロナによる影響により,時間がかかった。 実験条件として,印加電圧の大きさおよび周波数,バー電流の測定周波数範囲の設定,IMの負荷状態など,測定条件は多岐にわたるため,2021年度は,主にデータの表現方法の検討および理論的検討に着手した。 その結果,2021年度末に第2試作機が完成・納入され,テンソル解析法による解析理論の検討も行える状況となった。さらに,2022年度以降の測定における実験条件をある程度絞り込むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度までの成果に基づき,第2試作機に対して実験実施するとともに,理論的検討を行い,国内外の文献調査も並行して行う。当該研究の特色の一つとして,回転子バー電流の実測値を広く世間に公表することであり,まずは,この点を重点的に実施する。すなわち,実験データの学会などへの提示に重きを置く。 実験としては,滑りに対するバー電流に含まれる高調波成分の特徴を明確にする。すなわち,様々な運転条件でのバー電流を計測し,これを新たに考案したまとめ方で学会に提示する。また,高調波成分の発生原因をテンソル解析法を用いて明らかにしていく。まずは周波数に対する検討(定性的検討)を行い,可能であれば定量的検討にまで発展させる。 現在,電気学会産業応用部門大会および電気学会回転機研究会での公表を予定している。
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