かご形誘導電動機(以下,IMと略記)は産業用動力として多数用いられており,さらなる高性能化が求められている。そこで,研究代表者は,IMの高効率化,低振動・低騒音化,長寿命化などを目的として,長年,IMに対して多岐に亘る研究を行ってきた。IMでは,一般に,励磁電流を減らすために狭いギャップが採用されているため,ギャップ中の高調波磁束により効率低下,振動・騒音の発生などの問題を生じている。IMでは,その回転原理から,固定子の回転磁界により回転子電流が流れるため,固定子起磁力高調波および固定子スロット高調波などによる高調波電流が回転子バーに流れることになる。しかし,一般に,IMでは回転子が回転しているため,回転子バー電流を測定することが困難であり,回転子バー電流に対する検討が十分に行えていないのが現状である。 そこで,研究代表者は,アウターロータ構成で,かご形回転子を固定し,固定子を回転させる回転固定子形IM(以下,FOR-IMと略記)を試作し,回転子電流を直接測定できる試作機を試作した。当該研究期間中,初年度および2年目には,第1号試作機を用いて,回転子バーに誘導される電圧を測定し,高調波分析を行った。3年目には第2号試作機を用いて,回転子バーそのものを直接測定した。その結果,回転子バーには非常に多くの高調波電流が流れていること,それら高調波成分の周波数はテンソル解析による理論と一致していることなどを明らかにすることができた。しかし,新型コロナの影響および第2試作機の納入遅延などの影響により,回転子バー電流の大きさにまでは言及できていない。 以上のように,当該研究の当初の目的である,IMの回転子バー電流を直接測定して検討できる基礎が確立できた。
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