研究実績の概要 |
最新の学術論文や報告書について調査するとともに,さらに2021年度に開始された我が国の需給調整市場の取引結果を確認し,電源開発計画および市場モデルについて以下の通り研究を進めた。 電源開発計画については,従来電源を所有する発電事業者が需給調整市場とスポット市場の両市場に参加する状況を想定し,複数の電源開発シナリオにおける発電事業者全体の損益を計算する方法を提案し,長期の需給計画シミュレーションによって評価した。この際,需給調整市場については2021年度の我が国の需給調整市場の落札価格を,スポット市場については前年度に考案したシングルプライスオークションで決まる落札電力量に応じて発電機出力配分を決定する方法を用いた。シミュレーション結果から,需給調整市場とスポット市場の価格決定メカニズムが発電事業者の損益に影響を与えることを明らかにし,経済性の低い電源を開発するシナリオであっても事業者全体では利益が大きくなる場合があることを確認した。 市場モデルについては,混合線形計画問題(MILP, Mixed Integer Linear Programming)によって定式化される系統全体の需給計画において,需給調整市場における調整力提供を考慮し,需給調整市場における取引価格を決定する方法を提案した。この方法によって計算した取引価格を用いて,前述した電源開発シナリオを想定した需給計画シミュレーションを行うことで,市場制度の巧拙が電力系統全体としての電源開発計画に与える影響を評価することができる。
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