研究課題
最終年度は,プロセス数増加時に劣化する空間分割型並列有限要素法の並列性能改善に取り組んだ.前処理方法として,localized前処理(LP)およびadditive Schwarz前処理(ASP)が一般的に広く用いられている.両手法には一長一短があるが,電磁界数値解析分野における有用性について不明瞭な点が残されている.そこで,実規模電気機器モデルの非線形静磁界解析を例題としてLPまたはASPの性能比較を行い,両者の得失評価を試みた.その結果,ASPではプロセス間での重複を小領域境界の未知変数に限定することで並列性能を改善できること,両前処理法の性能は実装やハードウェア構成に大きく依存することを定量的に明らかにした.今後,さらなる並列性能改善に向けて,スレッド並列処理との併用について検討予定である.期間全体を通じて本研究課題では,空間分割・時間分割併用型並列有限要素法(PinSTFEM)の高度化を目的として,①新たな時間分割型並列計算法の創出による速度向上率の改善,②磁気ヒステリシスモデル化法の導入,③プロセス数増加時に劣化する空間分割型並列有限要素法の並列性能改善,に関する検討を行った.①については,回転機の定常特性解析に特化したdq-TP-EEC法およびOverlapping並列TP-EEC法を用いたPinSTFEMを開発し,研究成果は複数の論文として学術誌にまとめられている.②については,PinSTFEMに磁化履歴の更新処理を導入し,ヒステリシス特性の考慮の有無による並列台数効果の比較を行った.今後,提案法の国際会議での発表および論文誌へ投稿する予定である.③については,上述の通り,実規模モデルにおけるLPまたはASPの性能比較を行い,今後の方向性を明確化した.本研究の成果によりPinSTFEMの実用化が達成され,高効率電気機器設計・開発のさらなる高度化が期待される.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
COMPEL - The international journal for computation and mathematics in electrical and electronic engineering
巻: 42 ページ: 449~462
10.1108/COMPEL-04-2022-0161