研究課題/領域番号 |
20K04430
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研究機関 | 西日本工業大学 |
研究代表者 |
川崎 敏之 西日本工業大学, 工学部, 教授 (30352404)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プラズマジェット / 気液界面 / 活性酸素 / プラズマ医療 / 活性種輸送 / 供給ガス |
研究実績の概要 |
本研究ではプラズマ源の構造が,生体内部への活性種輸送にどのような影響を与えるか明らかにすることが目的である。当初の予定では構造が異なる5種類のプラズマ源を作製する予定だったが,当該年度では4種類のプラズマ源で実験を実施した。印加電圧,周波数,放電電力,プラズマ発生用ガス,照射距離・時間を変化させながら比較を行った。代表的な実験項目として,プラズマ発生用ガスとして用いたヘリウムとアルゴンが活性種輸送にどのような影響を与えるのか,各プラズマ源を用いて同放電電力下において比較した。その結果,模擬生体内部の深さ方向への活性種供給という観点では,アルゴンを用いた方が有効であることを実験的に確認した。これらは模擬生体通過後の活性種の二次元分布より判断した。 その理由を検討するために,放電発光分光分析や水への活性種供給量の定量分析(過酸化水素,硝酸イオン,亜硝酸イオン)を行った。これらの結果も踏まえ,なぜアルゴンを用いた場合に深さ方向への活性種供給が促進されるのか,単に供給される活性種量が多いだけなのか,他にも活性種輸送に影響与える因子があるのか,など検討を進めている。 模擬生体中の活性種輸送経路を考えるために,プラズマ照射した液体中に誘起される流れの解析も行った。流れはプラズマ源構造,プラズマ発生用ガス,印加電圧,周波数によって大きく変化することを確認した。このメカニズム解明が模擬生体中の活性種輸送経路の制御に重要なヒントを与えるだろうと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
構造が異なるプラズマ源により発生させたプラズマの照射が,模擬生体内部に輸送する活性種の二次元分布に与える影響はおおよそ予定通り進んでいる。特に各プラズマ源に供給するプラズマ発生用ガス(ヘリウムまたはアルゴン)が与える影響については興味深い結果が得られている。そのメカニズムについて,様々なアプローチによる解明を進めているところである。一方で,活性種の同定も本研究課題のテーマの1つであるが進んでいないのが現状である。現時点では活性種の中でも特に活性酸素種に限定した検出を行っている。活性種の同定に関しては遅れているのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
まずは,各種プラズマ源に供給するガス種に着目した実験で興味深い結果が得られているので進める予定である。これまではヘリウムまたはアルゴンのみの供給だったが他のガス(酸素など)を添加した場合など調べる予定である。これを構造の異なる複数のプラズマ源で実施する。模擬生体中の活性種の輸送経路を考察するために,プラズマ照射された液体に誘起する流れも確認しておきたい。模擬生体表面のダメージも確認する予定である。一方で,現在ヘリウムの入手が困難な状況となっている。その場合はアルゴンでプラズマ発生が可能なプラズマ源を中心に実験を展開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
全世界的な新型コロナウイルスの拡大によって,計画していた国内外出張の大部分がオンライン開催となった。これにより旅費としての使用がほとんどなかったため。
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