4種類の構造が異なるプラズマジェット発生器による模擬生体内活性種輸送について実験を進めてきた。これまでの実験結果から,金属電極がガラスなどに覆われていない発生器を用いた場合,熱的・電気的負荷を模擬生体に与えることが明らかになっていた。そのため,最終年度は電極をガラスで被覆した2種類の発生器に焦点を絞り実験を進めた。発生器構造の違いによって模擬生体中の活性種の二次元分布が全く異なることを,本研究室独自の可視化手法により明らかにした。これまでヘリウムでのみプラズマを発生させることができる発生器を中心に実験を進めてきた。本研究にて新規に準備した発生器はアルゴンでもプラズマを発生させることができるため,ガス種の影響についても実験を行った。構造が同一であればヘリウムよりアルゴンを用いた方が,模擬生体深さ方向へ活性種供給に関しては有利であることを実験的に確認した。深さ方向への活性種の駆動力を検討するために,プラズマ照射によって誘起される液体流(プラズマ誘起流)についても調べた。その結果,発生器構造によってプラズマ誘起流も異なることを明らかにした。特に,ヘリウムでは実現ができなかったプラズマ誘起流の制御を,アルゴンガスにより制御することに成功した(特許2件出願済)。 今回,発生器構造の影響について,計画していた全てを実行することができなかったが,予想外の有益な結果も得ることができた。様々なガス種でもプラズマ発生が可能な発生器の使用によって,これまで実現できていなかったプラズマ誘起流制御については今後につながる大きな成果であろうと考えている。
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