研究課題/領域番号 |
20K04434
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
飯岡 大輔 東北大学, 工学研究科, 准教授 (30377808)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | セミオフグリッド / 需要想定 / LSTM / ディープラーニング |
研究実績の概要 |
本研究では,未来の電力システムとして提案するセミオフグリッドにおける需要想定と設備計画の両手法を多地点多次元のデータ解析に基づいて構築することを目指している。R2年度はセミオフグリッド規模の電力システムを構築するために必要となる需要想定手法の開発に取り組んだ。セミオフグリッド内に大量導入された太陽光発電システムによる発電する電力をセミオフグリッド内で可能な限り地産地消し,電力需要と供給の差分であるインバランス分を小さくするためには,セミオフグリッド内に導入する蓄電池を有効活用する必要があり,適切な規模の蓄電池を導入するためにはセミオフグリッド内の実負荷を推定することが有効であると考えた。そこで,インバランス分をしわ取りする上位系統との接続点における電力潮流の時系列データから実負荷電力のみを分離する方法を開発した。接続点の電力潮流は大まかに言うとセミオフグリッド内の実負荷電力と太陽光発電システムの発電電力の差分に等しいが,差分から実負荷電力のみを抽出する方法はまだ確立されていない。本研究で開発した方法はディープラーニングの一種であるLSTM(Long short-term memory)に基づいており,あらかじめ用意する実負荷,太陽光発電システムの発電電力,および気象データの時系列データでLSMTネットワークを学習させることで,実負荷のみの時間変化を推定することができる。この推定値から実負荷の最大値と最小値を推定することができるので,セミオフグリッドに必要な太陽光発電や蓄電池の導入量を設計することが可能となる。なお,学習には大量のデータを処理するため,GPU計算や並列処理を行うことができる設備を導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多地点多次元のデータ解析に基づいてセミオフグリッドにおける需要想定と設備計画の手法を構築するために,本研究ではR2年度に①セミオフグリッド規模の電力システムを構築するために必要となる需要想定手法を開発する計画としていたが,おおむね計画通りに目標を達成することができた。年度当初は需要想定のための具体的なアルゴリズムは明確ではなかったが,文献調査などを通して本研究で取り扱う需要想定にはディープラーニングの一種であるLSTM(Long short-term memory)が適していることに気づき,アルゴリズムの構築,プログラムの実装,データを用いた検証を行うことができた。R3年度に実施予定である②十分な品質の電気エネルギーを供給できるセミオフグリッドの設備計画手法の開発にも着手しており,蓄電池の必要容量の大きさの考え方について検討し始めている。
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今後の研究の推進方策 |
十分な品質の電気エネルギーを供給できるセミオフグリッドの設備計画手法の開発に取り組む。従来は最大需要に対して設備構成を決定しているが,変動幅という不確定成分を考慮して設備構成を決定する。ただし,不確定成分を大きく見積もると過剰な設備構成となるため,コスト的なデメリットを生じる。また,不確定成分を小さく見積もると電気エネルギーの品質を損なう恐れがある。コストと電気エネルギー品質のトレードオフの関係を明確に見出し,最適化問題を用いた設備構成の決定を達成する。①の需要想定に用いる計算機とは別の計算環境をR3年度に整備することで,アルゴリズム開発の効率を向上させるとともに,②の検討結果を①にフィードバックさせることを可能とする。また,R4年度には③セミオフグリッド構築に必要なコストを評価する手法を開発する。①~③の研究を通して,セミオフグリッドの設計手法を確立し,総括を通して,本研究の次の課題であるセミオフグリッドの運用に関する課題を抽出する。
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