研究課題/領域番号 |
20K04436
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
南谷 靖史 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (10323172)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | パルス電界 / バーストパルス / がん細胞 / アポトーシス / ネクローシス / 細胞膜 / 絶縁破壊 / 活性種 |
研究実績の概要 |
2022年度は引き続き細胞への効果を高めるためのバーストパルス発生装置のスイッチの固体化,および高周波に重畳する低周波の効果の調査,そして低周波印加時に細胞で発生する活性酸素種による細胞死誘導効果の調査,を行った。 バーストパルス発生装置のスイッチの固体化では2021年度に購入した高電圧半導体スイッチが一次スイッチとして2022年度には本格稼働を開始した。だが,このスイッチを搭載した回路では従来のギャップスイッチを用いたものよりバーストパルス回路の充電時間が500nsと遅く,予定している二次スイッチが動作しないことが判明した。そこで,磁気パルス圧縮回路を組み,バーストパルス回路の充電時間の短縮を行った。磁気パルス圧縮回路を二段組むことによって充電時間を60~70nsと短縮できた。 また,二次スイッチを固体化する動作タイミングの確認を行った。しかし動作タイミングを調整しても動作が不安定だったため改良が必要であることが分かった。 高周波に重畳する低周波の効果の調査では高周波に重畳する低周波の効果については,バーストパルスの出力段数を10段にして低周波の周波数を半分にした。10段の波形は得ることができたが後ろ5段の接続が悪く,波形が乱れていた。そのためか,5段の波形と細胞死の結果には大きな差は現れなかった。 低周波印加時に細胞で発生する活性酸素種による細胞死誘導効果の調査では細胞はパルス電界印加時には膜破壊による組織流出で死亡すると言われているが,細胞膜の絶縁破壊によって発生した活性種(ROS)も関与している可能性が出てきた。2020年度にパルス電界印加により細胞が絶縁破壊することで,ROSが発生することが分かり,2021年度にROSを阻害することで細胞死が減少することを示した。2022年度はこれをさらに進めて細胞膜破壊,ROS発生,細胞死状況についての相関を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)バーストパルス発生装置の全固体化のために高電圧半導体スイッチを導入し,2022年度から本格稼働したが,バーストパルス回路の充電時間が500nsと遅く,磁気パルス圧縮回路を追加する必要があり,60~70nsの充電時間をつくるのに手間取った。 (2)二次スイッチの固体化において動作タイミングの確認を行ったが,タイミングが不安定で改良する必要が生じ,検討中である。 (3)細胞にアポトーシスを効率的に誘導できる周波数については,低周波の効果を,バースト出力段数を10段として調べ,低周波の周波数を半分にしてみたが,10段の波形は得ることができたが後ろ5段の接続が悪く,波形が乱れていた。そのためか,5段の波形と細胞死の結果には大きな差は現れなかった。さらに違う低周波の波を重畳して違いを調べ,最適な重畳する低周波成分を明らかにする必要が生じた。 以上,(1),(2),(3)共に新たな課題が明らかになったため,解決する必要が生じ,総合的には「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)二次スイッチのタイミング調整がまだできていないので正しく動作するようタイミングの調整を行う。 (2)引き続きバーストパルスの段数を変えることで低周波成分の周波数を変え,アポトーシス,細胞死を起こすのに最適な低周波成分を明らかにする。今後は10段に加え,15段,20段,25段を試し3分の1,4分の1,5分の1の低周波重畳を行う。 (2)低周波印加時に細胞膜破壊で発生したROSによる細胞死を明らかにするため,ROS除去剤の取り込み状況,細胞穿孔の状況,ROSの発生状況を染色により明らかにするのと,細胞死の状況をリンクさせて調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に引き続き,コロナにより海外の国際会議に参加できなかったことで支出できなかったことが大きな要因である。令和5年度は海外の国際会議に参加して調査を行う。 今後10段の改良,およびさらに25段程度まで低周波の波を重畳して違いを調べ,最適な重畳する低周波成分を明らかにするための材料費,検査費に使用する。
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