研究課題/領域番号 |
20K04442
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
木村 高志 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60225042)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | パルスプラズマ / スパッタリング / 多層コーティング / 硬質薄膜 |
研究実績の概要 |
様々な分野で需要が拡大しているハードコーティング材料(硬質保護フィルム)の機能性を向上させる方法の一つとして積層型コーティングに着目し、その作成技術を確立することが研究目的である。対象としている積層フィルムはナノメートルサイズの薄い層を数十層から数百層繰り返し積み上げたフィルムであり、本研究ではパルススパッタプラズマによる金属イオンや窒素イオンを高密度に含むイオンプロセスで各層の膜を作成し、繰り返し積み上げていく。 本研究では、耐熱性や腐食耐性に優れた窒化クロム(CrN)層をベースに、温度上昇に伴う酸化反応による摩擦係数の低下が期待できるバナジウムを含む窒化バナジウム(VN)層を積み上げてCrN/VN多層膜を作成した。CrN層厚の範囲を8-25ナノメートル、VN層厚の範囲を2-25ナノメートルとし、膜厚が1.0-1.2マイクロメートルに達するまで多層に積み上げ作成した。多層膜の機械特性、膜の構造と層厚との関係を調査した結果、テンプレート効果といわれるエピタキシャル的な膜成長は実現できなかったが、主として観測された(200)結晶面のナノ結晶子サイズは硬質フィルムの形成に適正範囲である8-15ナノメートルと推定された。CrN/VN多層膜の硬度は23-24GPaに相当し、CrN単層膜よりも約5GPa向上した。摩擦係数はVN層の厚さよりむしろCrN層の厚さに依存しており、CrN層厚の増加に伴い0.2-0.7まで変化した。これにより、層厚比により摩擦係数を0.2-0.7まで調整可能であることを示唆できた。さらに、VN層を窒化チタン(TiN)層にして、類似の実験条件で作成したCrN/TiN多層膜と比較をした結果、硬度の違いは1-2GPaであり、差異は5%程度であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
硬質な金属窒化物である窒化クロム層と窒化バナジウム層からなる多層膜並びに窒化クロム層と窒化チタン層の多層膜を形成し、材料の機械特性と層厚との関係を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
高密度パルススパッタプラズマによる材料プロセスで、積層型機能性ハードコーティング材料を作成することを目的とする。その対象は金属窒化物/金属窒化物、金属窒化物/ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンドライクカーボン/水素含有ダイヤモンドライクカーボンの組み合わせである。 その目的を達成するため、今後の研究の推進方策を以下に記す。 1. 作製したハイパワーインパルスマグネトロンスパッタリングならびにパルスDCスパッタリングの二つのスパッタリング方式を組み込んだ装置により、異種材料の持っている特性を活かした積層型機能性材料の作成に関する実験を行う。 2. 各層を構成する材料の特性を改善するために基板に入射するイオンの流束ならびにそのエネルギーの制御が必要である。そのため、従来のパルスマグネトロンスパッタリングの電源システムを改良し、多重パルス方式に改良し材料作製に関する実験的研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加した学会がオンライン開催になったこと、作成した材料の分析にかかわる費用が次年度の支払いになったことなどにより「次年度使用額」が生じた。 令和4年度に請求した助成金と令和3年度に生じた「次年度使用額」とをあわせて真空配管部品や各種タ-ゲット材料を購入する計画を立てている。
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