研究課題/領域番号 |
20K04450
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 進 千葉工業大学, 工学部, 教授 (00265472)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 失活レート係数 / 準安定励起原子 / 大気圧 |
研究実績の概要 |
HeにH2Oを混合したガス中の放電により生成されたHe準安定励起原子の紫外光遮断時の過渡電流波形から,He準安定励起原子の実効励起寿命を決定する実験を行った。得られた過渡電流波形は,異なる2つの減衰時定数をもつ波形となった。これらの減衰速度は一重項He(21S0)および三重項He(23S1)に依存し,文献によると速い減衰成分はHe(21S0),遅い減衰成分はHe(23S1)であることが述べられているが,本研究においても2つの減衰成分を確認することができた。しかしながら,He(23S1)とHe(21S0)の電極での二次電離作用(γm作用)による電流波形に大きな振動が伴い,減衰時定数の決定が困難であった。さらに, HeのグエンチャーであるH2Oガスを混合したことにより,過渡電流波形の減数成分が極めて小さな波形となり,より測定を困難な状態にした。そのため,過渡電流波形解析から,2つの電流成分に分離されたが,He準安定励起原子の実効励起寿命,そこから求まるHe準安定励起原子の拡散係数やH2OによるHe準安定励起原子の衝突脱励起反応速度係数(失活レート係数)を決定するまでには至らなかった。 Heなどの希ガスは,最近の誘電体バリア放電を用いた表面改質,プラズマ医療,プラズマ農業等に積極的に用いられるガスの一つであり,これらは大気圧放電で用いられることが多いため,H2Oとの失活レート係数を知ることは,そこで起きる反応を予測する上で重要な値となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,Heの準安定励起原子の実効励起寿命から,失活レート係数の決定を試みた。しかし,He準安定励起原子の実効励起寿命を得るために必要な過渡電流波形の測定において,その測定が困難になる状態になった。これは,電極での二次電離作用(γm作用)による減衰時定数の決定が困難になることを意味し,研究目的である失活レート係数が決定できないということを意味している。この原因は,He準安定励起原子の拡散係数が極めて大きいためであり,測定器で観測出来る時間領域より速い減衰をしているためである。そこで,本年度はHe中での電離係数測定を行い,He準安定励起原子がH2Oと衝突しPenning電離を発生していることを示し,論文として報告した。
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今後の研究の推進方策 |
希ガスが放電により励起され,大気に放出されることにより周囲ガスとして存在するN2やH2Oにそのエネルギーを受け渡し,N2との準安定励起分子やOHを生成すると考えられるが,今後は,それらの反応によりエネルギーがどのように受け渡されていくかについて検討する。そこで,放電により生成したエネルギーをもった希ガスを生成し,大気に放出した際に周囲ガスとどのように反応するかを調査する。特に,N2やH2Oがどの程度影響しているか検討すると共に,失活レート係数を決定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたガスは、毒性が強いとのことで、設備を伴う工事が必要であることがわかり、今年度購入することを止めたことによる。次年度は、使用を考えていたガスを止め、別なガスを使用する予定であり、次年度使用額はその購入にあてる。
使用計画 購入予定ガスは、He、Ar、N2、O2とこれらの混合ガスである。
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