大気汚染物質を放電プラズマにより分解除去する研究として,これまでN2の準安定励起分子 を用いて研究を行ってきたが,実際に大気中で大気汚染物質を分解除去することを念頭にして,大気圧プラズマジェットを活用する試みを行ったところ,本研究で使用した装置ではN2ガスでプラズマジェットが発生しなかった。この原因は,使用している電源の問題で,DBD放電を起こすのに必要な電圧が得られなかったためと考えられる。そこで,より低い電圧で放電するArやHeの希ガスに切り替え,ArやHeガスと大気との衝突脱励起反応速度係数(失活レート係数)の決定を試みた。大気圧放電が,プラズマ医療,プラズマ農業等へ積極的に応用されている現状を考えると,希ガスと大気中での反応を知ることは重要で,H2Oとの反応に関する失活レート係数は,大気中での放電の主反応になることから特に重要である。始めにArガスを用いて大気中にプラズマジェットを噴き出した。このジェットと大気との反応,したがってAr準安定励起状態(Ar(3P0),Ar(3P2))とH2OやN2との反応が主反応になると考え,プラズマジェットの発光を分光測定した。測定はプラズマジェット発生器のノズル先端からジェットの下流方向へ分光器の位置を変えながら分光測定を行った。位置に対する分光結果は,指数関数的な減衰曲線が得られたため,Ar準安定励起状態(Ar(3P0),Ar(3P2))の寿命を求め,そこからAr準安定励起状態とH2OやN2との失活レート係数の決定を試みたが,得られた寿命はAr(3P0),Ar(3P2))の寿命より長いことがわかった。したがって,この指数関数的な減衰曲線は,Ar(3P0)とAr(3P2)がH2OやN2との反応しながら減衰しているだけではなく,同時に,Ar(3P0)とAr(3P2)が生成しており,生成分布を表していることがわかった。この結果を現在論文にまとめている。
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