研究実績の概要 |
昨年度より引き続きマウスマクロファージ由来細胞株RAW264.7に対し,ナノ秒パルスとミリ秒パルスの与え方,懸濁液の組成などを変化し,電気ダメージの大小やGFP発現個数の多寡を調査した。最初に印加する短パルス高電圧を(50 ns,2.1~3.5 kV / 100 ns,1.5~2.5 kV / 250 ns,0.9~1.6 kV / 100 ns,1.5~2.5 kV / 3 us,274~456 V)と変化して実施した導入実験では,いずれもパルス幅でも多少の差はあるもののポアリングパルスとしての役割を果たしていることが判明した。そこで実際の実験において使用しやすい100 ns,2.0 kVをポアリングパルスとし,トランスファーパルスとしてのミリ秒低電圧パルスのパルス幅と電圧を大きく変化した組み合わせパルスで実験を行った。 2つの組み合わせパルスそれぞれの極性については,負極性ナノ秒パルスに続くミリ秒パルスは負極性の方がGFP発現個数が高くなるという結果が得られ,HL-60細胞の時と同様の結果が得られた。Propidium Iodide(PI)核染色液とHoechst33342蛍光色素を用いた染色により死細胞と生細胞の確認も行った。 組み合わせパルスを印加したRAW264.7細胞の状況(影響なし,良好な導入,ダメージ大)を,ミリ秒パルスが懸濁液へ投入したエネルギーの値を横軸,同パルスによる電界(=電圧/キュベットのギャップ長)の値を縦軸としてプロットすることでと,良好な導入ができる組み合わせパルスの最適条件の範囲が簡易に推定できた。RAW264.7細胞に対する範囲は,同様の方法でプロットしたHL-60細胞に対する最適条件の領域とは異なり,その中心はエネルギー,電界のいずれも大きな値であることも分かった。 新しい細胞種としてCHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞)の培養も開始した。
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