研究実績の概要 |
現在,市販のエレクトロポレーション装置(市販EP)による導入は困難とされている細胞THP-1を対象とした。ポアリングパルス(PP)とトランスファーパルス(TP)によるマルチパルスでGFP導入を行った。TPエネルギーを横軸,TP電界を縦軸として細胞状態をプロットした。これまでの対象細胞では確認できた「生細胞数:中~多,導入細胞数:中~多」という領域が狭く,これらの数も少ない=導入が困難である,ことが分かった。 蛍光標識デキストランを用いた実験では,TP電圧にはパルス幅毎に導入を可能とするしきい値があり,ある値を超えるとダメージとして現れることが分かった。 比較的良好な結果が得られるパルス条件で,TPを複数に分割したバーストパルス(BP)で実験を行った。1日後のGFP導入率はTP42%,BP49%,市販EP49%であった。生存率(1日後→4日後)は,TP8%→15%,BP13%→47%,市販EP10%→6%であった。導入率は同程度であるが,数日後の生存率に差が現れた。 他研究機関でマルチパルスEPと市販EPによるGFP導入実験を行った。TPはBPとした。1日後のGFP陽性率と生存率は,市販EP20%,58%,マルチパルスEP装置18%,67%と同程度で,4日後は市販EP22%,4%,マルチパルスEP装置17%,21%,となり本研究室と同様の傾向が確認できた。 ナノ秒パルスを用いたマルチパルスEPで種々の細胞に導入実験を行い,細胞状態をもとにプロットを描き,細胞種毎に効率良い導入の可否とパルス条件が見いだせた。 今回の研究では,ナノ秒PPの持つ機能が,細胞膜の穿孔,核膜の刺激,その両方なのかについては解明まで至らなかった。ナノ秒パルスPP単体では導入ができないこと,ナノ秒PP無しのTPのみの印可では導入効率が大きく低下することは判明した。
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