本研究は、福島第一原子力発電所の廃炉作業を加速すべく、汚損したケーブル絶縁体への高線量放射線照射による材料劣化の特性を評価し、そのメカニズムを解明することを目的としている。研究実施3年目となる2022年度は、前年度までの研究成果の中で不足する実験および分析について早期に実施するとともに、これまでの研究成果をまとめ、公表した。 期間全体としての研究成果の一つに、損傷原子炉内を想定した放射線環境の実現のための放射線源の線量定量化がある。これは、本研究の特色であり実験にも使用している、大強度電子ビーム照射により発生するパルス放射線の線量を計測し定量化するものであり、フィルム線量計を用いた計測と数値シミュレーションによる解析の両面で分析した。その結果、本手法により発生する放射線の線量率が数値的に明らかになり、原子炉内環境を再現するための電子ビーム照射回数が見積もられ、より現実的な実験環境を構築することができた。 また、コンタミネイトケーブルへの放射線照射による影響調査については、本研究にて導入したガスクロマトグラフを用いて、長時間のケーブルへの課電により発生するガス成分から劣化状況を調査した。しかしながら、検出されたガス成分に変化が見られたものの、これらが放射線照射による影響であるかどうかを明確に判断できるデータの取得には至らなかった。今後も更なる実験・分析を進めることで、ケーブルの劣化メカニズムの解明を達成できるものと考えている。
|