研究課題/領域番号 |
20K04462
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
八木 秀樹 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (60409737)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 情報理論 / 符号化 / 情報セキュリティ / 乱数生成 / 情報源符号化 |
研究実績の概要 |
一様分布に従う乱数を変換して所望の確率分布を生成する問題はResolvability問題と呼ばれる.この問題では,確率分布の生成にかかるコストを削減するために,一様乱数が取る値域のサイズ(乱数生成レート)をできる限り小さくすることが求められる.また,Resolvability問題と双対な乱数生成問題はIntrinsic Randomness問題と呼ばれる.この問題では,与えられた確率分布からできるだけ大きな値域のサイズを持つ一様乱数を取り出すことが求められる.これまで様々な近似精度を測る尺度に対して,乱数生成レートの計算可能な表現を求めることが試みられてきた. 令和3年度の研究では,相対エントロピーや変動距離などを含む近似精度の尺度クラス(f-ダイバージェンス)に対して,Resolvability問題とIntrinsic Randomness問題における最大乱数レートの解析を詳細に行った.特に,最もよい性能を持つ符号の符号化レートが系列長の増大とともに最適符号化レート(該当の問題では最適な乱数生成レート)に近づく速さを表す量は,二次符号化レートと呼ばれている.本研究では,Resolvability問題およびIntrinsic Randomness問題において二次乱数生成レートを詳細に特徴づけた.この結果,従来知られている特定の近似に対する結果を包含する,一般的な公式を導出することができた. またこの課題と関連の深い,プライバシー保護を目的とした情報源符号化や確率変数から秘密情報を生成する符号化問題についても,最適符号化レートの解析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
応用上よく用いられる種々の確率分布の近似尺度の一般クラス(f-ダイバージェンス)に対し,Resolvability問題とIntrinsic Randomness問題における最適な二次乱数生成レートの表現公式を導出している.また,導出した公式が,従来知られている特定の近似尺度に対する二次乱数生成レートの公式を特別な場合として含む一般系となることを示している.これらの結果は,乱数データから秘密情報を取り出す乱数共有プロトコルなどに応用することがで期待でき,工学的な意義は大きい.ここまでおおむね研究計画通りに進めることができていることから,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の研究で扱ったResolvability問題では,固定長の一様乱数を変換して確率分布を近似することを仮定している.またIntrinsic Randomness問題においても,与えられた確率分布から固定長の一様乱数を取り出す問題を扱っている.一方,実用的には様々なサイズ(可変長)の一様乱数に対する解析が望ましい.今後の研究では,可変長の一様乱数を対象とした乱数生成問題における最適な乱数生成レートを解析する予定である. また仮説検定問題や未知の情報源に対する分類問題における誤り確率の指数部(誤り指数)の解析を進める予定である.さらにこれらの研究で得られる知見を利用して,プライバシー保護等の情報セキュリティを目的とした符号化システムにおいて,強い安全性を効率的に実現する符号化の開発に応用することを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大の影響で予定していた国際会議・国内学会がオンライン開催に変更になり,旅費の使用額が大幅に減った.令和4年度以降の研究で成果発表のための旅費として支出する予定である.
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