本研究の目的は,先行してグラフ領域におけるスペクトル拡散符号の生成法を開発することにより,センサやSNSのネットワークを表現するグラフのための電子透かし技術における情報劣化低減などを具現化し,電子透かしの高性能化・高機能化を実現することである.つまり,本研究課題では,これまでの時系列データに対するスペクトル拡散技術からグラフ信号を対象としたスペクトル拡散技術に理論拡張することを目指す. この目的を達成するために,最終年度はi) Watershedアルゴリズムにより画像領域を分割した電子透かし,ならびに,ii)グラフクラスタリングを用いたグラフ機械学習の研究に取り組んだ.まず,i)効果的に透かし情報を挿入・検出するためには保護対象データに応じた処理を採用することが重要である.そこで,画像データの特徴を踏まえて,Watershedアルゴリズムにより領域分割した後に領域ごとに透かし情報を埋め込む手法を提案した.本提案により領域分割が電子透かしの画質向上に有効であることを明らかにした.この成果をまとめた論文を国際会議にて発表した.つぎに,ii)グラフ処理でも対象グラフを小さなグラフに分割することにより計算量の低減が期待できる.そこで,クラスタリング分割による小グラフへの細分化を活用したウェーブレット畳み込みネットワークを提案した.本提案により分割処理がノード分類の学習タスクに有効であることを明らかにした.この成果をまとめた論文を国際会議にて発表した. 一方で,研究期間全体においては,主として,(1)有向グラフにおけるスペクトル拡散符号の生成法と(2)グラフ構造を持つ三次元メッシュの電子透かし手法を提案した.さらに,これらの研究に応用できる(3)画像特徴に応じた画像電子透かし手法を提案した.これら3つの手法の有効性を計算シミュレーションにより明らかにした.
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