研究課題/領域番号 |
20K04473
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
八嶋 弘幸 東京理科大学, 工学部情報工学科, 教授 (30230197)
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研究分担者 |
五十嵐 保隆 東京理科大学, 理工学部電気電子情報工学科, 准教授 (80434025)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光論理演算回路 / QD-SOA / highly nonlinear fiber |
研究実績の概要 |
変調信号に対する論理機能切り替え可能な全光論理回路について検討した。電気信号を用いずに光信号のみで動作し、超高速で動作が可能となる。周波数変調信号に対し、非線形効果の大きいファイバであるHighly Nonlinear Fiberを用いた縮退四光波混合と非縮退四光波混合を利用したもので、XOR回路、AND回路を設計しそれらが正しく動作することを確認した。また、これらを用いて、全光半加算器を設計した。数値解析とシミュレーションによる検討の結果、消光比がXOR回路で20.51dB、AND回路で12.70dBであることが分かった。また、入力光強度と消光比の関係を求め、消光比が最大となる入力光強度を求めた。 さらに、位相変調信号に対する論理機能切り替え可能な全光論理回路についても検討した。ここでは能動素子としてQD-SOA(Quantum Dot-Semiconductor Optical Amplifier)を用い、その動作については、レート方程式の数値解析により出力光の電界の位相と振幅を求めた。QD-SOA内部の光電界とキャリア密度、光子密度および利得は、QD-SOAを多数のセクションに分割して行列伝達法を用いて求めた。シミュレーションによりアイパターン、消光比、Q値などの諸特性を求め、入力信号光、制御光のレベル、QD-SOAへの注入電流などを最適化し、制御光の位相誤差の許容度も求め、有効性を示すことができた。 また、これらの超高速なデータレートに対応する誤り訂正符号についても検討した。誤り訂正能力の高いLDPC符号において、超高速伝送時に問題となる、データの読み込み時のずれに対応できるいくつかの手法を提案することができた。さらに、情報セキュリティについても軽量ブロック暗号の攻撃耐性等について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、位相変調信号に対する論理機能切り替え可能な全光論理回路のみを検討する予定だったが、検討の結果、周波数変調信号に対する論理機能切り替え可能な全光論理回路も提案することができた。提案する周波数変調信号に対する論理機能切り替え可能な全光論理回路では、Hihgly Nonlinear Fiberを用いているが、これは受動素子であるため解析的にも比較的簡単な手法で検討できる。この成果はOSAのconferenceで発表した。 また、当初の予定通り、位相変調信号に対する論理機能切り替え可能な全光論理回路も提案することができた。この回路では、超高速通信に対応が可能なQD-SOAを用いており、160Gbpsで動作が可能である。また、入力数および論理演算子切替機能があり、単一の回路で2入力のみならず、3入力の論理素子としても動作可能であることを示した。また、4 入力全光XOR 論理回路を提案し、4 入力のXOR 演算を実現する複数の全光XOR 論理回路構成間の特性の違いを明らかにした。 以上のように、当初の計画以上に順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
光位相変調信号のコヒーレント全光復調器に関する検討を行う。 昨年度に提案した位相変調信号に対する論理機能切り替え可能な全光論理回路において、3dB Couplerを取り除き、コントロールパルスの位相をπ/2ずつ4通りに変えた4つの並列回路に4値位相変調(QPSK)信号を入力すると、位相が一致した回路のみから出力が得られるため、電気信号を用いずに光領域で直接復調できる。この復調回路において、波動方程式とレート方程式の数値解析およびシミュレーションによりアイパターンを求め、消光比、Q値など提案受信機の諸特性を求める。また、シングルモードファイバと分散補償ファイバを通した後の分散の影響を考慮し、Q値から相当するビット誤り率を求め、提案する全光復調器の有効性を明らかにする。 さらに、光CDMAの全光干渉除去と暗号との併用による情報セキュリティの向上についても検討予定である。暗号としては種々の共通鍵暗号(KASUMI, Midori64, 128等)とし、最も解読されやすい条件として、単一送信者の送信端で送信信号が盗聴されたと仮定し、高階差分攻撃、中間一致攻撃、補間攻撃等の最新の攻撃法を適用し、符号長と多値数等のパラメータと安全性の関係を求め、定量的にセキュリティ強度を評価し、提案法が高いセキュリティ機能を有することを明らかにする。
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