研究課題/領域番号 |
20K04478
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研究機関 | 八戸工業大学 |
研究代表者 |
越田 俊介 八戸工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70431533)
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研究分担者 |
八巻 俊輔 東北大学, サイバーサイエンスセンター, 助教 (10534076)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 信号処理 / 可変ディジタルフィルタ / 有限ビット長 / 演算精度 / フィルタ構造 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、自由自在な特性調節を可能とする可変ディジタルフィルタの伝達関数に対し、数理最適化に基づく高精度フィルタ構造を適用するための一手法を確立した。そして、この手法によって得られる可変ディジタルフィルタの演算精度を評価し、本手法が有効であることを実証した。これらの成果の詳細を以下に述べる。 上述の手法を得るための基本的な考え方は昨年度の研究課題と同じであり、複数の特性固定フィルタの伝達関数それぞれに対して数理最適化に基づく高精度フィルタ構造を求め、この特性固定の高精度フィルタ構造の組をカーブフィッティングして、可変ディジタルフィルタに対しての高精度構造を近似多項式として実現する。しかしながら、数理最適化に基づく高精度フィルタ構造は、一般的には1つの伝達関数に対して一意に定まらないため、特性固定の高精度フィルタ構造の組における各フィルタ係数が互いに近い値とならなかった場合には、カーブフィッティングによる多項式近似を適用することが難しくなってしまう。この問題を回避するため、本年度の研究では、高精度フィルタ構造を2次セクションおよびL1/L2混合係数感度最小構造に限定して、カーブフィッティングと多項式近似を適用した。2次セクションに基づくL1/L2混合係数感度最小構造では、与えられた伝達関数に対して所望のフィルタ係数を一意に定めることが可能であることが、既存の研究にて証明されている。このことを用いて本研究課題を遂行したところ、数理最適化に基づく高精度フィルタ構造と自由自在な特性調節の両方を実現する高精度可変ディジタルフィルタを得ることができた。そして、得られた可変ディジタルフィルタの係数感度を数値計算にて評価した結果、本研究による可変ディジタルフィルタの係数感度が理論的な最小値を近似的に達成していることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究課題の遂行の結果、適用可能な範囲が限定されてはいるが、本研究の目的としていた数理最適化に基づく高精度フィルタ構造を有する可変ディジタルフィルタの実現を達成することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、数理最適化に基づく高精度フィルタ構造のクラスを広げ、L2感度最小構造などを可変ディジタルフィルタに適用するための手法の確立を目指す。また、高精度フィルタ構造の次数を2次に限定せず、3次以上に拡張した場合でも適用可能な手法の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大の影響で当初予定していた出張が中止となり、その旅費が今年度の余剰額として生じた。そのため、この余剰額を当該助成金として、翌年度分の請求額と合わせて使用する予定である。使用計画については、翌年度における旅費あるいは成果発表用の学会参加費に充てる予定である。
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