研究課題/領域番号 |
20K04480
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
宇野 亨 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80176718)
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研究分担者 |
有馬 卓司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20361743)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アレーアンテナ / 指向性合成 / 誘電体スラブ / MIMO / オングラスアンテナ / グリーン関数 |
研究実績の概要 |
本研究は車両に搭載される6GHz帯オングラスMIMOアンテナの設計法の確立と電波伝搬特を解明することによって,自動運転や5Gあるいはその次の世代を見据えた移動通信システムを確立することであり,そのために誘電体スラブ表面に設置されたアレーアンテナの指向性合成理論を確立することに焦点をしぼった研究をするものである.このために本年度は(1)誘電体スラブ表面設置アンテナの電磁界解析法の確立,(2)仮想無限ガラスの実現,について理論的な検討を行った.以下にその内容と実績の概要を述べる. (1)無限に広い誘電体スラブに対するダイアディックグリーン関数は既に明らかになっているが,円柱座標で表されているために線状や面状のアンテナに適用するのは困難であった.本研究では直角座標表現に変換することに成功した.それによると,任意の場所における電磁界は2つのゾンマーフェルト型積分だけで計算できることが初めて明らかにされた.また,オングラスアンテナの場合にはその積分が簡単な方法で精度よく計算できることが分かった.一方,アンテナから放射された電磁界エネルギーの多くはガラス内を遠方まで伝搬することも明らかになった.このため,ガラスの面積が非常に大きい場合でもガラス端部からの影響が大きい.端部からの影響を精度よく計算する方法もまた明らかにした. (2)(1)の結果はガラス端面の構造がアンテナ特性に大きな影響を及ぼすために車両ごとのアンテナ設計が必要であるこを意味している.本研究ではガラス端部からの反射を軽減させる簡単な構造を見出し,その効果を数値シミュレーションによって計算し,6G付近で大きな改善効果が得られることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は(1)誘電体スラブアレーアンテナの指向性合成法,(2)車載ガラスアンテナへの応用と電波伝搬シミュレーション法の確立,(3)仮想無限ガラスの実現,の3つの課題を予定していた. (1)ガラス端部からの反射の影響を正確に近似する方法を見出したことにより,初期の目的を達成するための理論的な指針を得たことは有益であった.しかしながら,新型コロナ感染防止のため,研究室所属の大学院生の協力の下で行う予定であった実験による理論の検証は行わず,もっぱら理論と数値計算による検討を中心に行った. (2)ガラスの曲率や形状による影響を数値シミュレーションと実験によって行う予定であった.数値シミュレーションによる検討は行ったが,(1)と同じ理由により実験による検証は見合わせた. (3)理論的な検証と共に,実装を想定した反射軽減構造を見出した.(1)と共に論文として公表する準備を進めている. 一方で,電子情報通信学会の研究会などに参加して実施する予定であった調査・資料収集なども新型コロナ対策のため取りやめざるを得なかった.このため,研究成果の公表についてはやや遅れ気味ではあるが,全体としてはおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
研究課題の今後の推進方策,研究計画の大幅な変更はない.次年度は理論的な検討と共に実験による検証を積極的に行ってゆく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症対策のため,研究室所属の学生による実験を中止した.また,同じ理由により当初予定していた学会や研究会への参加を見合わせた. 次年度は今年度実施できなかった実験および当初計画していた実験の両方を研究室所属の学生と共に行って理論を検証する予定である.また,学会や研究会が対面方式あるいはオンライン方式で実施されれば積極的に参加する予定である.その他の使用計画は変更ない.
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