研究課題/領域番号 |
20K04483
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
北村 心 島根大学, 学術研究院理工学系, 助教 (60549179)
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研究分担者 |
増田 浩次 島根大学, 学術研究院理工学系, 教授 (60583127)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マルチコアエルビウム添加ファイバ増幅器 / 利得制御 / 全光型 |
研究実績の概要 |
近年、将来の超大容量光ネットワークを支える新規空間分割多重技術として、マルチコアエルビウム添加ファイバ増幅器(MC-EDFA)を用いたマルチコア伝送技術の研究が精力的に進められている。これまでに我々は、MC-EDFAに適用可能な全光型フィードフォワード利得一定制御(FF-AGC)方式を提案してきた。この全光型FF-AGC回路の高速・高精度化を実現する光共振器構成及びその性能明確化に関する検討は喫緊の課題である。 令和2年度は、上記全光型FF-AGC方式について、主に利得媒質にエルビウム添加ファイバ(EDF)を用いた共振器構成を用いた実験検討を行った。信号光波長帯域を、従来検討のC帯(1530~1560nm)より長波長帯であるL帯(1570~1600nm)とした全光型FF-AGC回路の構成および動作特性について検討した。 L帯MC-EDFAのための全光型FF-AGC回路は、ファイバリングレーザ(FRL)から構成される。FRL内のEDFAでは、EDFを2段構成とした。2つのEDFの間にアイソレータを設置し、双方向励起を行った。FRLの発振光である制御光波長は、帯域短波長側の1570.4nmとした。帯域内4波長の飽和光の入力パワーを変化させ、被制御EDFAにおける利得制御特性(静特性)を調べた。その結果、利得偏差を、AGCを用いない場合の11.0 dBから、用いた場合の0.1 dBに顕著に低減できることを実験により明らかにした。また、飽和光を変化させた際の利得制御の時間応答特性(動特性)についても実験検討を行い、動的な利得制御動作を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、利得媒質にエルビウム添加ファイバを用いた全光型フィードフォワード利得制御(FF-AGC)方式の構成および制御特性の検討について取り組んだ。 信号光波長として、従来検討であるC帯より長波長帯であるL帯とし、L帯MC-EDFAのための全光型FF-AGC回路の構成とその制御特性の検討を行った。その結果、利得偏差を、利得制御を用いない場合の11.0 dBから、用いた場合の0.1 dBに顕著に低減できることを実験により明らかにした。さらに、飽和光を変化させた際の、利得制御の時間応答特性についても、その制御動作を実験確認した。 以上のことから,おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
L帯MC-EDFAのためのFF-AGC方式の検討について、令和2年度に引き続き、利得媒質にエルビウム添加ファイバ(EDF)を用いた構成の検討を行う予定である。令和3年度は応答速度などの制御特性の向上を図る。 また、制御回路内の利得媒質に半導体光増幅器(SOA)を用いた全光型フィードフォワード利得制御(FF-AGC)方式について、動作特性およびその性能の検討を行う予定である。SOAでは、その短い上位準位寿命により、FF-AGC回路の顕著な応答速度の向上が期待される。そこで特に利得制御の時間応答特性に着目し、検討を進める。一方、SOAでは、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)に比べ大きな偏波依存性や雑音指数などの課題がある。制御回路内の利得媒質としてSOA及びEDFAを用いたFF-AGC構成について、動作特性及び制御性能について比較、検討を行う。利得制御回路の共振器構造についてもファイバリング共振器に加え、リニア共振器構成について検討する予定である。 さらに、マルチコア用全光型FF-AGC回路の最適な光共振器構成及びその性能の明確化を行う。全光型フィードフォワード(FF)/フィードバック(FB)制御の併用により、トータルでの制御特性について明確化を行う予定である。なお、マルチコア化に向けた検討についても、主に理論・シミュレーションを中心に進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた学会がオンライン開催となり、旅費の支出が不要となったため、次年度に使用することとした。 実験部品購入費用として支出する予定である。
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