近年,電波を用いたセンシング技術が実用化され,その可能性についても更なる興味が深まって来ている.本研究では,電波を用いたセンシングの代表的な技術として,主に近傍界によるアンテナセンサやレーダを考える.その内容は,(1)近傍界を用いたセンシング技術,さらに(2)レーダのような仕組みによる電波センシング技術として,アンテナにメタ表面を組み合わせた構造についての可能性を探ったものである. (1)については,人体の心拍数や呼吸を例にとり,近傍界測定の可能性について検討した.その結果,従来のミリ波帯に比べて低い2.4GHz帯においても近距離であれば十分な測定ができることを確認することができた. (2)については,主にメタ表面とそれを用いた到来方向推定方法について検討した.さらに,地中における電波伝搬特性に関する基礎検討を行った.(2)の内容については,メタ表面に単素子のみのアンテナで到来方向の推定を圧縮センシングアルゴリズムを用いて行った.さらにメタ表面の設計方法として,通常行われる単位セルに周期構造を組み合わせたモデルに基づく設計では無限の面積に相当する特性となるが,メタ表面の面積が有限であっても,無限の場合の特性に近づけるような特性補償法について検討した.さらに,UHF帯であるが,地中伝搬に関する基礎検討を行い,地中センシングの可能性についても検討した 現在,ミリ波等によって多く検討されている電波センシングであるが,本研究の結果により,低い周波数でのセンシングの可能性を見出すことができた.また,メタ表面を用いることで,高分解能なセンシングの可能性,実用性を考慮した有限面積のメタ表面の設計法等,多くの知見を得ることができた.
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