研究課題/領域番号 |
20K04488
|
研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
三橋 龍一 北海道科学大学, 工学部, 教授 (90254698)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | CubeSat / SDR / 無線通信システム / 筐体型アンテナ / ISS / きぼう / J-SSOD / イプシロンロケット |
研究実績の概要 |
令和3年度は、本研究の目的を達成する上でマイルストーンとしていたSDRモジュール(SX1255_EV)の開発に成功するとともに、JAXAの公募「革新的衛星技術実証3号機」に2021年1月に追加選定された静岡大学の50kg級超小型衛星「STARS-X」に、「星のかけらプロジェクト」(2021年4月23日開催のKDR :Kick off Design Reviewで正式に始動)の中核的な立場で参画して、STARS-Xに搭載するPicoSatおよびCubeSatの開発を行い、ISS放出のみではなくJAXAイプシロンロケットの安全審査に対応する知識と技術を習得することができた。本研究において、軌道上実証実験を行うためのCubeSatに必要な一連の極限環境試験を体験した意義は大きい。 本研究の令和3年度前半までの成果は、「イノベーション・ジャパン 2021 ~大学見本市(オンライン開催:2021年8月23日~9月17日)」に採択され、出展した動画が下記のYouTubeにアップされている。 「超小型衛星を利用した無線通信実験用プラットフォームの提供」 URL : https://www.youtube.com/watch?v=7Xl8EE4DDeU&t=11s さらに、本研究の成果の一部は令和3年度科研費「ひらめき☆ときめきサイエンスへようこそ大学の研究室~~KAKENHI」に採択され、そのプログラムを2021年8月11日に北海道美唄市内で実施している。 URL : https://www.hus.ac.jp/old-news/hit_topics/2021/09/202109024651/
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究におけるSDRモジュールの開発思想は、ソフトウェアと共に外付けのハードウェアの柔軟性を高めることを最重要視して、手はんだでハードウェアの外付けが可能であることである。435MHz帯に対応し、I/Q信号を独立して入力・出力が可能なSDRモジュールを開発するために必要な市販されているSDRチップを探した結果、唯一見つけることができたのがSX1255(400~510MHz対応)である。 開発したSDRモジュール「SX1255_EV」に搭載したSX1255は、LoRa用に開発されたものでありSDRチップとしては極めて省電力である。また、SX1255はLoRa用に開発されたものであり汎用のSDRではないため、開発したSDRモジュールのような用途で使用されている事例はないと思われる。SX1255_EVの基板へのパーツ実装もすべて手はんだで行っている。SX1255_EVはSX1255の他、TCXO32MHz、SAWフィルタ、LNAで構成している。SX1255_EVのSDRモジュールとしての柔軟性は、ソフトウェア・ハードウェア共に世界最高クラスであると言える。 加えて、地球周回軌道放出後に確実に衛星の状態情報であるHKデータを生成するシステムを構築するため、新しい概念である「基板ロム」の回路をブレッドボード上に試作し、動作確認に成功した。「基板ロム」は、ロジックICのみで構成し、回路シミュレータLTSpiceにより出力を確認し、さらに開発したSDRモジュールから正常にCW信号が送信されることを確認した。
|
今後の研究の推進方策 |
宇宙商社であるSpace BDと2020年に「HMU-SAT1」(1IサイズのCubeSat)のISS「きぼう」からの超小型衛星放出サービスの打上げ契約をしたのに引き続き、2022年度の第一四半期に「HMU-SAT2」の打上げ契約をする予定である。今後は、SDRで構成したCubeSat通信システム開発を続けるとともに、かけら衛星の開発経験を活かして衛星の開発を行い、軌道上実証実験を行う準備をする。2023年度中にSDRモジュールの放射線試験等を行い、宇宙環境での動作確認をしたのちにHMU-SATの打上げを行う予定である。 また、2021年8月11日に美唄市内で実施した「無線受信システムを構築して超小型衛星のHK信号の受信にチャレンジ!」ひらめき☆ときめきサイエンスには、日本学術振興会のサイトを自分で調べて東京から参加した中学生もおり、未来を担う子供らに無線通信技術に興味を持つきっかけとなる活動の重要性を再確認したことから、同様の活動を今後も継続的に行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
発注予定の物品が品不足(世界的な半導体不足)であり、受注を受け付けていなかったためであり、受注を再開したら発注する。
|