研究課題/領域番号 |
20K04490
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
藤沢 匡哉 東京理科大学, 工学部情報工学科, 准教授 (10345431)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 代数曲線符号 / リスト復号法 / BMSアルゴリズム / 確率的アルゴリズム |
研究実績の概要 |
本研究では、大きな符号において優れた性能を持つことが知られている多点代数曲線符号の双対符号に対して、1点代数曲線符号に対する効率的な限界距離復号法として知られているBerlekamp-Massey-Sakata(BMS)アルゴリズムを拡張することによって、訂正限界を超えた復号を可能にするリスト復号の効率的な復号法を与える。リスト復号は可能性のある符号を列挙する復号法であり、復号においてBMSアルゴリズムを適用して未知シンドロームを求める段階で多項式の選択によって発生する分岐をすべて求めていくことによって実現する。このリスト復号を効率的に行うために、すべての分岐を探索するのではなく確率的に選択して計算する高速復号法を検討する。
本年度は、1点代数曲線符号の双対符号の高速復号法であるBMSアルゴリズムを拡張し、1点代数曲線符号に対するリスト復号法を与えた。最終的には1点代数曲線符号の拡張である多点代数曲線符号に対するリスト復号を与えることが目的であるが、見通しの良い基本的な1点代数曲線符号に対して理論を整理することで、その後の拡張が容易になると考えている。今回与えた復号法では、多数決論理により与えられる候補値のそれぞれについて分岐して現れるシンドロームのすべてについて復号を行うことになるが、これらのシンドロームのいずれかを辿ることで正しい解を得ることができ、必ず復号できることを示した。さらに、提案したリスト復号法について実装までを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染症への対応のため講義準備等の業務に多く時間を割かれたため、シミュレーションの準備に遅れが生じ、多数決における各シンドロームに対する極小多項式の関係を明らかにするところまで進捗していない。
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今後の研究の推進方策 |
まず、多数決における各シンドロームに対する極小多項式の関係を明らかにする。これらの知見に基づいて、前年度に与えたリスト復号法の高速化を行う。高速化については、復号アルゴリズム中で候補シンドローム系列をすべて列挙して候補符号語を求める際にすべての分岐を求めるのではなく、シンドロームを計算する多項式を確率的に選択する方法について検討する。このリスト復号法を実装し、実環境を想定した復号性能をシミュレーションにより検討する。この結果をまとめて12月に開催される学会で発表する。
さらに、1点代数曲線符号の拡張である多点代数曲線符号の双対符号に対しても同様のリスト復号法が成立することを示す。最後に、多点代数曲線符号の主符号と双対符号に対するリスト復号法の互いの関係について統一的な視点から議論し、その性質を明らかにする。この結果を論文としてまとめ、学会発表、学会誌への投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症の影響による想定外の業務負荷によって本研究の進捗が遅れ、研究をまとまる段階まで達しておらず、学会発表が行えていないこと、および、学会の中止などにより、予定していた学会参加で計上していた予算も消化することができなかったことが主な理由となる。 次年度では、学会発表、および、論文投稿等は予定通り実施し、さらに、研究調査等で前年度からの繰り越し分を利用する計画である。
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