研究実績の概要 |
力覚・音声・ビデオ三感通信における多次元QoE(Quality of Experience)のベイズ統計構造方程式モデル(SEM)を,因果方向を考慮してQoS(Quality of Service)情報を組み込んで拡張した.特に,QoS情報が多次元QoEの予測にどのように役立つかを研究した. QoEとQoSとの関連性の数理モデル化は,これまで多くの研究が行われており,QoE分野における古典的問題である.しかし,従来研究は,通常,単一尺度QoEを,因果方向を考慮せずQoSから予測している.因果方向をモデル化し多次元QoEをQoSから予測する先行研究は全く見られない. そこで本研究では,1次元QoE尺度(5段階評点)のQoSパラメータによるロジステック回帰(従来研究における典型的手法)を取り上げて,本研究で提案した3C-SEM, 6C-SEM, 及びMIMICと,予測精度を比較した.3C-SEMは,3個の構成概念(3C: 音声ビデオ品質eAVQ,力覚品質eHQ,ユーザ体感品質eUXQ)から成るSEMである.6C-SEMは,3C-SEMにおける各構成概念をQoS用とQoE用とに分離する.MIMICでは,QoSを原因(Cause),QoEを結果(Effect)とし,3C-MIMICと1C-MIMIC(それぞれ構成概念数3,1)とを検討した.予測すべきQoE尺度数を1から13まで変えて解析した.モデルの比較には,10分割交差検証平均二乗誤差と情報量基準WAICとを用いた. その結果,ロジステック回帰モデルは最も精度が低く,3C-SEMや3C-MIMICは高精度を実現することが判明した.また,QoE尺度数が構成概念数の2倍以上の場合には3Cが優れていて(6Cは同程度)QoSの影響は低いが,それ以外では1C-MIMICが高精度であることも分かった.この成果は,ジャーナルに投稿済である.
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