昨年度導入した光ファイバー往復型サニャック干渉計をベースとした光磁気光学効果測定系に標準試料としてテルビウムガリウムガーネット(TGG)を挿入して、これに微小磁場(数ガウス程度)を印加してファラデー効果の測定を行った。(TGGのベルデ定数から概算して3.2ガウスを印加するとファラデー回転角は1 mradになる。)短時間(1分程度)であれば0.1 mradのオーダーまでの変化を測定できるが、磁化曲線を測定しようとすると10分程度の時間スケールで起きるドリフトのため、測定データには1 mrad程度のばらつきが発生してしまう。光学定盤からの伝わる振動の低減、温度変化を避けるために光学系を断熱材で覆うなどの対策を試みたが根本的な解決にはならない。光学系を精査した結果ファイバーカプラーに用いている顕微鏡対物レンズからの残留反射が干渉計を走るビーム本芯と干渉を起こしていることが問題であるとの結論に達した。サニャック干渉計は2つのアームに光路長差が生じないために安定な干渉が観測されるが、残留反射では光路長が異なるために干渉が不安定となり、これがメインの信号に重畳されて時間的にドリフトするノイズを発生させる。偏光子や波長板などの光学素子は表面が平面なため、これらからの残留反射は素子をわずかに傾けることでビーム本芯から空間的に分離することができる。しかし曲面からなるレンズからの残留反射は除けない。現在使用している通常のLD光源ではなく、コヒーレンス長が短いSuper Luminescent Diode(SLD)を使うことによりビーム本芯と対物レンズからの残留反射光の間の干渉が起きないようにすることが本質的に重要である。残念ながらSLD光源は用意できず本研究はここまで終了となる。
|