研究課題
整形外科、リハビリテーション、スポーツ医学、痛み治療等の分野で骨格筋の硬さを定量的に測定し、それを診断・機能回復・痛み改善の客観的な指標として使いたいという要求が高まっている。生体内部の骨格筋の弾性を画像化・測定するための方法として、いくつかの方法が実用化されたが、定量性、生体への安全性、高価な装置価格など、まだ課題が残されている。本研究は、研究代表者が発案した生体硬さの映像法(C-SWE:Continuous Shear wave Elastography)を臨床で役立たせるために、「関連技術開発」、「産学医連携での実用機開発」、「臨床評価」を3本柱とする研究を行うことが目的である。本年度は、以下のような実績を上げることができた。「関連技術開発」については、運動器内部の筋膜や筋内腱の高分解能可視化のためにせん断波の位相不連続線図を用いる新たな映像化技術を開発した。この方法はせん断波の位相を奥行方向に微分しせん断波の位相の不連続な点を可視化する方法であり、筋膜や筋内腱のように運動器内に周囲媒質とは弾性の持つ薄層が存在するときに、その位置とずり歪に相当する指標をカラー図で画像化するものである。この方法の評価を行うためにInVivo実験を行ったところ、運動負荷前後の筋内薄層の弾性変化を可視化することができた。「産学連携での実用機開発」では昨年に引き続き2社と共同研究を行った。第一の研究内容はフィールドでも使える小型・可搬型のエコー装置を用いて、せん断波映像を得る装置の開発であり、映像の高分解能化のための非球面ビームフォーミング、位相増幅による筋内の微細構造の可視化法等を開発した。第二の研究内容は、従来法であるせん断波エラストグラフィと本開発法とのファントムを用いた比較実験であり、複数のファントムを用いた実験では誤差10%以内でせん断波の速度推定ができることを示すことができた。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要にも記載の通り、「臨床評価」、「関連技術開発」、「産学医連携での実用機開発」を3本柱とする研究であるが、「関連技術開発」として新たな高分解能映像法を開発したこと、「産学医連携での実用機開発」では医療機器開発企業2社と共同研究を遂行していることなど当初目標の実績を上げることができた。本年度、得られた研究成果に関しては、計3件の特許出願を行った。
「臨床研究」については、現在、複数の臨床機関との共同研究を広く進めていく予定である。「関連技術開発」については、今年度の成果を踏まえて臨床評価ができる装置の実現を目指して継続研究を行っていく。「産学医連携での実用機開発」については医療機器開発企業2社との共同研究開発をさらに発展させていく。これら研究課題の実施に際しては今後解決していかなければならない課題も残されているが、今まで得てきた知見やスキルを活かしてこれら課題の解決を図っていく。
次年度は、本研究の最終年度に当たり、当初計画での申請額の他に当初予定していた学会がコロナ禍でWeb開催に切り替わったことにより旅費の支出が見込みより少なかった。最終年度の当たる本年度は、本研究の3本柱である「関連技術開発」、「産学連携での装置の試作」および「臨床評価」で残された課題を本補助金を活用して精力的に行っていく。特に臨床評価に関しては、2022年度に施設のIRBの認可の下で、本装置の臨床評価を行っていく予定であり、このための経費の支出が見込まれる。さらに本装置での測定値の較正について複数ファントムを購入して実施していく予定であり、このための経費も必要になる。
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JOURNAL OF MEDICAL ULTRASONICS
巻: 48 ページ: 115-121
10.1007/s10396-020-01076-w