最終年度に当たる本年度は、前年度までの成果を基にアキレス腱の伝播速度を測定できるシステムの設計および試作を行った。測定においては、①雑音の多い生体信号の中からせん断波に由来した信号だけを抽出し画像化するロバストな計測、映像再生法の構築、②せん断波を生体中に励起させるための小型加振器および、超音波プローブと小型加振器を一体型として検査者が片手で操作できるシステムの実現、③生体模擬ファントムを用いた測定、映像システムの評価の3つの事項について研究を行った。まず、せん断波に由来した信号だけを抽出し画像化するロバストな計測法の実現であるが、せん断波再生画像のS/N向上のために、せん断波の複素振幅等化処理を組み込んだせん断波画像再生法を提案した。一般に、フレームごとに得られるせん断波複素振幅は、せん断波の初期位相がフレームごとに異なるために加算平均処理によるS/N向上を行えないが、提案法では各フレームの初期位相を参照領域を設けて同位相にする処理(等化処理)を行うことで、加算平均処理によるS/N向上を実現する方法である。小型加振器および超音波プローブと小型加振器を一体型として検査者が片手で操作できるシステムであるが、超小型(重量100グラム以下)のアクチュエータを組み込んだ加振器を3Dプリンタで試作した。さらにこれを超音波プローブと一体にできる防振アタッチメントを弾性素材を3Dプリンタで造形した。これら試作品を組み込んで測定、映像化システムを実現し、生体模擬ファントムを用いて評価実験を行った。この結果、せん断波伝播速度2m/sからアキレス腱を模擬した6m/sまでの生体模擬ファントムを用いた実験で、試作システムは誤差5%以内でせん断波の伝播速度が計測できることを確認した。
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