本研究は,高分解能レーダのための要素技術:「スパースアレー」と「拡張アレー信号処理」を踏まえて,高精度センシングの実現を目指したものである.ここでは(1)スパースリニアアレーの高機能化,(2)ディープラーニングによる2次元スパースアレーの最適化,(3)ビームフォーミング応用と信号復元について記載する. (1)スパースリニアアレーの高機能化においては,既存のスパースリニアアレー構造をもとに最適化を行い,アレー自由度を高めつつ,結合漏れを低減する新たなアレー構造を複数考案した.当初考案した Extended Nested Array with Multiple Subarrays (ENAMS)をもとに,Flexible ENAMS (F-ENAMS),Generalized ENAMS (GENAMS)を新たに考案した.特にGENAMSは,既存のどのスパースアレー構造よりもアレー自由度が高く,現時点では世界で最も優れたスパースリニアアレー構造として認識されている. (2)ディープラーニングによる2次元スパースアレーの最適化においては,解析的なアプローチが困難であった2次元スパースアレー構造の最適化問題に対して,焼きなまし法をもとにしたディープラーニング手法を考案し,得られた最適アレー構造の性能を評価した.既存の2次元スパースアレー構造と比較して,到来方向推定性能が極めて高いことを検証し,高く評価されている. (3)ビームフォーミング応用と信号復元では,到来方向推定問題のみならず,ビームフォーミングへの応用が可能であることを示すとともに,実際のディジタル変調信号の受信と復調結果により性能を評価した.既存の拡張アレー信号処理では復元が困難であった位相情報についても,復元が可能であることを実証しており,スパースアレーの応用範囲を広げる研究成果として非常に有用である.
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