研究課題/領域番号 |
20K04503
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
泉 政明 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (50336939)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 燃料電池 / 電流分布 / 磁界 / 逆問題 |
研究実績の概要 |
燃料電池は深刻化する地球温暖化、エネルギーセキュリティの確保、新規産業創出などの課題に対応できる有力な技術である。この燃料電池の普及拡大のためには、燃料電池の発電性能・寿命の更なる向上が必要である。発電中の燃料電池内部の電流分布は、その性能・寿命に大きな影響を及ぼすが、燃料電池の構造を変えずに、また、発電性能に影響を及ぼさずに、その電流分布を計測できる有効な手法がない。 本研究では、発電中の燃料電池周囲の磁界を測定し、その磁界から逆問題解析により燃料電池内部の電流分布を推定することを目標とする。 2020年度は、燃料電池内部の電流パスを模擬した3次元の立体直流電気回路を設計・作製した。この内部に独立した25系統の電流パスを設け、各々の電流パスに直流電源を接続して任意の電流を流すことで、燃料電池発電中を模擬した磁界を形成した。高感度3軸磁気センサ68個を模擬燃料電池周囲に配置し、磁界測定を行った。模擬燃料電池内部に電流を流しながら磁界測定し、得られた磁束密度データのうち、非常に小さな値のデータは誤差が占める割合が大きいとして削除し、有効なデータだけを用いて電流分布を推定した。なお、それぞれの磁気センサは、測定した磁束密度の値と、各電流パスを流れる電流値から順計算で求めた磁束密度の値と比較することにより校正した。これまで、磁界から電流への逆問題解析に使用していたチホノフの正則化法では、模擬燃料電池中央付近の電流値を推定することが困難であったが、新たに導入したスパースモデリング理論を用いることにより、模擬燃料電池を用いた実験では、精度の高い電流分布の推定を可能することができた。今後は、模擬燃料電池内部の電流値および電流パスを様々に変えて、検証実験を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は模擬燃料電池による全ての検証実験を2020年度中に終了する予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大のため、大学内への入構規制が続き、十分な実験を実施することが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度実施する予定であった模擬燃料電池による残りの検証実験を継続し、同時にラボサイズの燃料電池実機による実証実験を進める。 模擬燃料電池を用いた実験では、様々な条件においてスパースモデリング理論の適用可能性を更に検証し、逆問題解析法の適切な改良を進めていく。 燃料電池実機による実験では、燃料電池内部の電流分布を検証する他の手法がないため、電極の一部がない欠陥部分を有する特殊な発電素子を用いる。電極がない欠陥部分では発電が行われないため、磁界データから逆問題解析を行った場合、その欠陥部分の推定電流値はゼロになるはずである。この推定電流値がどの程度ゼロに近いかで、本手法の有効性を評価する。 また、燃料電池の発電により形成した磁束密度を高い精度で測定するために、磁界に及ぼす周囲の影響を除外するための校正法の改良を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
[理由] 新型コロナウィルス感染拡大による大学内入構規制により、当初予定していた模擬燃料電池による実験を全て実施することが出来なかったことと、学会発表がWeb開催となったため、出張旅費が発生しなかったためである。 [使用計画] 2020年度の残額は模擬燃料電池による不足実験を実施するための材料の購入費に充てる。また、2021年度予算は当初予定した通り、ラボサイズの燃料電池実機による実証実験を行うために使用する。
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