本研究では,薄膜結晶状の酸化物半導体ガスセンサを用い,VOCに対し1 ppbのガス感度を達成することを目的とする。センサ膜としては,サファイア基板上にスパッタリング法を用いてエピタキシャル成長させたSnO2薄膜結晶を採用する。 本年度は,研究課題名にあるように,ガスセンサ感度を向上させるための,酸素補償条件およびそのプロセスの検討を行った。適切な条件で酸素補償を行った場合には,酸素空孔由来の欠陥キャリアと思われるキャリア密度が大きく低減し,ガス感度が向上する結果となった。研究期間当初の実験の立ち上げ遅れの影響で,濃度1 ppbのガスに対する感度までは確認できなかったが,本研究成果で得られた膜厚,キャリア密度によるセンサ感度の向上,および,従来の高感度化手法と組み合わせると,近日中にこの目標が達成できるものと考えている。 研究期間全体の成果についてまとめると,初年度は,高感度なセンサ膜を得るための成膜を実現できる真空装置の設計,作成を行った。それに続き2年目では,センサに適した半導体の電気的特性を得るための膜厚依存性の検討を行い,膜厚と電気的特性,センサ感度の関係が明らかになった。この成果は,2件の学会発表とともに,原著論文として投稿済みである。最終年度では,これをもとに酸素補償条件下での成膜とセンサ感度の検討を行い,提案手法による感度向上が確認された。この成果は2024年度中に学会発表を行ってゆく予定である。
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