研究課題/領域番号 |
20K04505
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
高木 晋作 東京都市大学, 理工学部, 講師 (70386358)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 動的光散乱 / 二重ロックイン検波 / 多重散乱 / 光強度変調 |
研究実績の概要 |
測定系の周波数分解能の向上をはかるため、光学系の改良に継続的に着手している。補助金から購入した光チョッパーのドライバー、ロックインアンプ、信号発生器の外部制御を図るため、PC(日本HP社 HP 470 G8)および計測機器制御アプリケーション(LabVIEW)のアクセス権付与を補助金から支出した。また、白濁試料の調製時に気泡を除去するために、遠心分離機(CN-1040)を補助金により購入した。 光学系改良と並行して、測定系の周波数分解能の向上をはかるため、散乱光を受光後の信号処理系をどのように組み替えるのが最良かを理論的に考察した。2021年3月の日本物理学会第76回年次大会での発表内容をふまえて、「明滅する固定干渉縞によるコロイド試料の拡散運動の励起」に方針転換した場合、本方法の重要な特性である「位相敏感検波による多重散乱光成分の完全除去」が、所期の二重ロックイン検出技術で1Hzを下回る低周波数帯の信号処理ができるか否かについて再考した。その結果、明滅による濃度変調では最終的に得られるスペクトルは、もはや複素スペクトルとして観測されなくなり、パワースペクトルと等価な単一成分のスペクトルになると考えられる。しかし、二重ロックイン検出の第1段階においては位相敏感検波が有効にはたらいているため、第1段階で位相を含めて検波することでインコヒーレントな多重散乱成分は除去できる。また、第2段階の検波では、明滅の強度変調から現れる高調波成分を除去することで、単一散乱成分だけからなるスペクトルが得られると考えられる。以上の内容は2022年3月の日本物理学会第77回年次大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究でもっとも重要な実験装置である連続発振レーザー光源が、昨年度からレーザー発振が不安定になる不調を示すようになった。特に2月末には代理店に不調の対応策を問い合わせて一時的な処置を取ってみたが、状況はかえって悪化し、発振にたびたび失敗するようになった。現在も代理店に対応策を問い合わせている段階であり、今後、最悪の場合はレーザー光源の修理や交換が必要になる可能性もある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の到達目標である1Hzを切る分解能による複素スペクトルの実測を試みる。実測に用いるポリスチレンラテックスのコロイド溶液は複数の粒径の試料を既に購入済みであり、光チョッパーを制御するプログラムについてもほぼ構築が終わっている。しかし、光学系の構築にはレーザー光源が必須であり、現状のレーザー発振の不調が解消されない限り、本研究が完遂することはあり得ない。そのため、まずはレーザーの不調を解消することを優先させる。まだ不調の原因が確定していないため、不調の解消にどの程度の時間が必要になるかは未知であるが、解消し次第、まずは数Hzオーダーの分解能による複素スペクトルの実測を試み、光学系や信号処理系の改良を重ねつつ分解能の向上を狙う。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続き、コロナ感染対策のために学会の開催がオンライン化されたことにより、旅費の支出が不要となった。 光散乱の試料ステージに装着する温度コントローラを購入する予定であったが、申請時に検討していたメーカーが、当該の温度コントローラを生産販売しないことになったため、検討していた製品と同等以上の性能を保持しつつ同等以下の価格で入手可能な温度コントローラを探すことになった。ようやく1月末になって適当な製品(東海ヒット TPH-SX-100)を見出し、急いでデモ機の借り受け、見積作成などのやり取りを行ったが、どうしても年度内の納品が困難になってしまい、年度内の助成金使用を断念せざるを得なくなった。2月時点での見積額は約50万円であり、この購入が実施されていればほぼ使用計画に即した使用額になっていたと考えられる。 次年度の使用計画については、所期の温度コントローラ購入に先立ち、レーザー光源の不調を解消するための検査、修理等の対応を行う。レーザーの対応に大幅な費用が見込まれる場合は温度コントローラの購入を断念せざるを得ないが、少額におさまるようであれば温度コントローラの購入を進め、試料の温度変化によるスペクトル幅の変化を追跡したい。旅費についてもレーザーの検査結果をみたうえで支出を検討したい。
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