研究課題/領域番号 |
20K04512
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
伊藤 盛通 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主任研究員 (50712931)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メタマテリアル / 電磁気特性測定 |
研究実績の概要 |
本研究では、高周波損失に依存せず、広帯域の電磁気特性を任意形態の試料一つで測定できる「メタマテリアル測定空間」を実現することを目指している。 本年度は、電磁界分布と素子形状・素子パラメータとの相関を明らかにするため、電磁界シミュレータのAnsys HFSSを用いて、測定系に関する以下の2つのシミュレーションモデルを作製した。(A)構成要素を [I]送受信アンテナ、[II]整形領域、[III]測定領域の3つに分類した二次元右手・左手系複合(CRLH)メタマテリアルモデル。(B)[II]整形領域と[III]測定領域を兼用し、一次元配列させたゼロ次共振器モデル。 まず、(A)の二次元CRLHメタマテリアルモデルについて、単位セルに二次元境界条件を適用したモデルを用いてバンド構造を解析した。また、右手系材料からなる平面導波路と組み合わせた2ポートモデルを作製し、解析した結果、負の屈折率によるレンズ機能で電界強度を局所的に高くできることを確認した。 一方、(B)のゼロ次共振器モデルを用いて透過係数(S21)を解析した結果では、セル数による共振ピーク数や共振周波数が他の文献とよく一致することがわかった。また、共振器内媒質の誘電率を一部変更することで、試料の挿抜を模擬した結果においても、ゼロ次の共振周波数が変化する様子が確認できた。 これら2つのモデルについて、上記解析と文献調査とを併せて比較検討したところ、(B)ゼロ次共振器モデルは[II]整形領域と[III]測定領域を兼用したシンプルな構造であり、かつ、共振信号を用いることで低損失材料をも測定できることから、ゼロ次共振器モデルを中心にして、3セル~5セルのシミュレーションモデルを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【遅延状況】 本年度は、二次元CRLHメタマテリアルモデルとゼロ次共振器モデルを用いた、実際に試料を挿抜できる測定系の電磁界シミュレーションモデルを構築し、電磁界分布やバンド構造を明らかにする予定であった。しかし、CRLHメタマテリアルモデルとゼロ次共振器モデルの2つのシミュレーションモデルの構築と解析したところまでであり、試料挿抜に適した構造、素子パラメータ、およびその構造における電磁界分布を求めることができなかった。 【遅延理由】 当初ゼロ次共振器モデルを[I]送受信アンテナとし、二次元CRLHメタマテリアルモデルは [II]整形領域と[III]測定領域を想定して個別に計算モデルの確立とバンド計算を実施した。しかし、解析と調査を進めていく中で、ゼロ次共振器モデルに[II]整形領域と[III]測定領域を包含することで、よりシンプルな構造で高精度に測定できる可能性があることがわかった。そこで、ゼロ次共振器モデルの単位セルを一次元配列した計算モデルを作製した。ゼロ次共振器モデルに試料挿抜を模擬した解析した結果、共振周波数が変化する様子を確認することができた。 今回、ゼロ次共振器モデルの単位セルを一次元配列した計算モデルは原理実証のためであるが、将来的には電磁界分布を操作して幅広い試料の形態に対応できるように二次元配列への展開も考えている。 このように、2つの測定系のシミュレーションモデルについて、構成を変更しながら計算と解析を行ったため、電磁界分布と素子形状や素子パラメータを求めるところまでには至らず、遅延が発生した。しかし、ゼロ次共振器モデルは比較的シンプルな構造であることから、今後の検証はより迅速に行えるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、本年度に得られた2つの測定系のシミュレーションモデルに基づいて、ゼロ次共振器モデルを中心とした電磁気特性測定手法を確立する。文献を基にしたゼロ次共振器モデルをそのまま適用しても試料の挿抜は難しいことから、これを容易にできる構造について改良、考案する。また、2つの測定系のシミュレーションモデルについて、試料挿抜時における電磁気特性(誘電率、透磁率)による共振周波数等への影響や電極の形状や配置による電磁界分布の制御を検討する。並行して測定システムを試作し、電磁界分布と試料挿抜時の共振信号の変化を検証する。なお、測定システムの試作に向けて二次元のスキャンステージを購入済みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内学会(電子情報通信学会ならびに関連研究会)への現地参加を予定していたが、オンライン参加となり旅費に剰余分が生じた。2021年度からは国際学会への参加も予定しており、更に研究会など情報交換および発信の機会を増やして使用する予定。
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