研究課題/領域番号 |
20K04517
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
中野 和也 宮崎大学, キャリアマネジメント推進機構, 助教 (80713833)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生体イメージング / スペックル相関 / 位相回復 / 散乱媒質 |
研究実績の概要 |
本年度は,レンズ,拡散板,ロングパスフィルタ,LEDなどを購入し,実験に必要な基礎的な光学部品を揃えると共に可視光域における基礎的な実験系の構築を実施した.さらに,光学特性を推定する際に必要な積分球と分光器を用いた分光反射率と分光透過率を計測するシステムも構築した.積分球と分光器は光ファイバーで接続されており,分光器からPCに分光スペクトル情報が送られる.計測では反射光または透過光計測のジオメトリを設定し,光源からの入射光がサンプルにより反射または透過し,さらに積分球内で拡散反射された光が分光器により検出される.このシステムで計測した分光反射率及び透過率を入力値として,逆光伝搬モンテカルロ・シミュレーションによりサンプルの光学特性値を推定することができる. 本研究の画像再構成にも用いている位相回復アルゴリズムの位相解の特性に関するシミュレーション実験も実施した.本シミュレーションに関するプログラムは全てMATLABで実装し,位相回復アルゴリズムで求められた位相解の特異性などについて調査をした.その結果から生体イメージング以外にも新たなアプリケーションへの展開につながる可能性を示した. シリコーンを母材とした光学ファントム作製方法も習得した.光の吸収体としてはインディアインク,散乱体としては酸化チタンを用いた.上記をそれぞれ超音波洗浄器にて十分に拡散させた後に,液体シリコーンと混ぜ合わせて撹拌させた.その過程で生じる空気の泡は光学特性に影響を及ぼす為,真空ポンプが繋がれたチャンバー内に液体シリコーン溶液を置き,真空脱気することで取り除いた.空気の泡を取り除いたあとは,シリコーンファントム固化用の型に流し込み固化させ完成させた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は基礎的な実験系などを構築するフェーズであり,順調に進展しているといえる.構築に際して,カメラの感度なども重要であることがわかったので,その部分の改善についても検討して進めていきたい.ソフトウェアに関する課題については,位相回復アルゴリズムについて様々な視点で考察し,MATLABによるシミュレーション実験により実証することができており成果も得られた.来年度も引き続き進めていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は可視光域において,生体組織に近い光学特性を持つシリコーンファントムを作製し,その特性と画像再構成及び光学メモリー効果について調査していく.さらに,ファントムの結果を踏まえたうえで,鶏肉や植物の組織切片なども用いた実験も検討する.撮像系については,sCMOSカメラといった高感度カメラを使用し,よりノイズにロバストなものに工夫する.次に,今後もシミュレーション実験により位相回復アルゴリズムに関する研究も同時に進めていく.位相回復アルゴリズムにおける位相解の収束性については,一般的な問題でもあるため,その成果は生体イメージングのみならずその他の応用技術にも関係するものと思われる.
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