最終年度では,散乱媒質となる試料に対して,光学的メモリー効果によるスペックル相関を計測した.光学系について散乱媒質に照射するビームのスポット径を小さくするために顕微鏡で用いる対物レンズ(倍率は10倍)を用いるなど,一部の光学素子を変更する工夫を行った.その結果,計測システム自体を従来よりもコンパクトなものとすることが可能となった.また,自動回転ステージに取り付けれられた反射鏡により基準に対してミリオーダーの任意のビーム入射角度を設定することが可能である.さらに,本システムでは,散乱媒質へのビームの入射角度をミリ度レベルで変えるだけでなく,システムの構成を変えることでビームを水平または垂直方向にシフトすることでスペックル画像の相関を計測することも可能である.本システムで試料となる散乱媒質に対してレーザーの入射角度を変えたときの複数のスペックル画像を撮影した.サンプリング角度を複数設定し,各サンプリング角度で取得したスペックル画像群と基準となるスペックル画像間の2次元の相関を計算により求めた.入射角度や入射シフト量の増加に伴い,相関値は大きく変化するが,その変化は媒質に大きく依存することが分かった.今回,計測システムの構築により基礎的なデータを取得することはできた.今後も引き続きこのシステムを利用して媒質の条件を変えた基礎データを取得すると共に,具体的なバイオやセキュリティ等のアプリケーションへの展開も進めていきたい.
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