研究実績の概要 |
今年度は①前年度までに試作したマルチスペクトルイメージャ(MSI)による種々のスペクトル推定性能の検討と、②膜厚最適化シミュレーションを行った。 ①では9チャンネル型MSIを用いて、実験的にさまざまな種類の教師データを生成する試みを行うとともに、種々のスペクトル推定モデルを検討した。またモデル構築にあたってMSI出力である画素値の多項式特徴量を利用したり、カーネル回帰モデルを用いたりするなど非線形的な特性を取り入れることが効果的であることを特定した。最終的にはLCDで表示させた計1,174色の教師色を用いて35色の推定を行ったところ、R,G,Bいずれのチャンネルでも8bit換算の推定誤差が8未満にできることを確認した。 これと並行して、応用面の探索の意味を込めて果実の撮影画像からBrix糖度を推定する試みも実施した。 ②では室蘭工業大学のグループと協力し、メタヒューリスティック手法と有限差分時間領域法(FDTD法)を組み合わせたシミュレーションで最適な膜厚プロファイルを探索する試みをおこなった。その結果可視~近赤外域における自然物体の反射スペクトルを指向した9チャンネル、7層前後のマルチスペクトルフィルタアレイ(MFA)において、それぞれのチャンネルの分光感度間の独立性(直交性)を極大化する膜厚を見出すことができた。具体的には可視~近赤外域をカバーする半値全幅20nm程度のガウシアンスペクトル列を照射した際のMSIの応答(画素値出力)のパターンを計算し、それらの上位特異値の算術平均または調和平均を評価関数とすることでチャンネルの犠牲を最小限に抑えつつ全体最適な膜厚を見出すことができた。 ②の結果を受けてMFAの改良試作も行い、その後入手性の容易なIoT用カメラに実装することにも成功している。
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