研究課題/領域番号 |
20K04533
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
奥田 裕之 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90456690)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | モデル予測制御 / 自動運転 / ハイブリッドダイナミカルシステム |
研究実績の概要 |
多様なタスクを実行できるモデル予測制御コントローラの実現を目指し,モデル予測制御で各時刻に解くべき最適化問題の実行可能性を連続的に確保するためのアルゴリズムの基礎検討を行った. タスクの切り替えの前後において,タスクを表現する状態空間の次元が異なることから,直接的につなぐことができないため,これらのタスクをつなぐ中間モードを定義した. 中間モードは,二つのつなぐべきタスクA,Bの状態空間の直積となる拡張した状態空間を持ち,切り替え前のタスクAと同じ拘束条件を持つ.これによりタスクAから中間モードへの切り替え時には状態を拡張するのみで,諸制約条件は引き継ぐため,実行可能性を連続的に確保可能となる.次に,中間モードにおいては,すぐさまタスクBに切り替え可能であるとは限らないため,タスクBへの切り替え可能性を確保する必要がある.もし,タスクBの実行可能性が確保されていれば,そのままタスクBのモデル予測制御へと切り替える.逆に,タスクBの実行可能範囲でなければ,実行可能範囲に移動させるような評価関数(ソフト制約とも言える)を設計し,タスクBの実行可能領域に状態が遷移したら,タスクBへと切り替える,というアルゴリズムを提案し,プログラムに実装した. このように定義した中間モードは,タスクA,タスクBの最適化問題から自動的に定義可能で,設計者はタスクA,タスクBの最適化問題さえ定義すればよい. 一般に実行したいタスクがn個あれば,これらのタスク間の中間モードはn×n-1パターンあり,これらの間の遷移をすべて手動で設計することは困難を極めるが,本手法では中間モードをすべて自動生成でき,そのタスク間をスムーズに実行可能性を保持しつつ遷移できる. 自動運転における高速道路での追従走行と,レーンチェンジの二つのタスクを対象に,提案アルゴリズムが想定通り動作することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた基礎的なアルゴリズムを確立するところまでは問題なく遷移した. 例えば中間モードにおいて,タスクBの実行可能範囲にうまく誘導できないケースがあることが確認されたが,中間モードにおける評価関数を工夫することで解決した. このようにいくつか実装上で表面化した問題もあったが,現在のところ前方者追従タスクからレーンチェンジタスクへの遷移を対象にしたシミュレーションにおいては動作検証まで進み,基礎理論に関しては論文投稿を行うなど,順調に研究が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
現在,前方者追従タスクとレーンチェンジタスクの二つのタスク間が遷移する運転シーンを対象として提案したアルゴリズムの動作検証を行ったが,より一般的な状況で適用可能かどうか検証するため,①追従やレーンチェンジより複雑なタスク(例えば交差点の右折・通過など)を対象として適用をしてみること,②3つ以上のタスクが相互に切り替えられることを確認するため,切り替えのみではなく全体の制御システムとしてのアーキテクチャを整備し,動作検証を行うこと,③ソフトウェアのコードが整備されていないので,リファクタリングを行いながら,提案するマルチタスク型の制御アーキテクチャを体現しやすいソフトウェア構造に整備すること,の三つを軸に,本年度の研究を進め,単なる研究で終わるのではなく,制御の専門家でなくても扱いやすい,実応用してもらいやすいアーキテクチャに整えながら,提案手法の問題点の洗い出しを進めていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの蔓延に伴う各種学会のキャンセルのため,出張費に関する支出がなく,旅費の使用が無かったため. 次年度の研究経費として利用し,実験装置の改修費に利用する予定.
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