研究課題/領域番号 |
20K04534
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
太田 快人 京都大学, 情報学研究科, 教授 (30160518)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | システム同定 / 制御システムモデル |
研究実績の概要 |
ベイズ推定法に基づいたシステム同定法に関して、事前分布の決め方と同定入力設計に関する考察を行った。 事前分布の決め方については、システムが非負入力に対して非負出力を出すという知識があるとき、つまり対象システムが非負システムであるときにどのような事前分布が好ましいかについて考察した。 まずシステムのインパルス応答の事前知識をハイパーパラメータに与えることのできる事前分布として打ち切り正規分布の利用を提案した。具体的には、打ち切り正規分布を決める二次項は非負定値行列となるが、そのパラメータ化を非負性を仮定しないシステム同定で用いられているDC(diagonally correlated)カーネルと同じ構造にとったときに、現れるハイパーパラメータがインパルス応答の減衰性と相関性を表していることを示した。 次に、経験ベイズ則によるハイパーパラメータの決定方法の導出を行った。EMアルゴリズム(期待値最大化法)を適用するときの計算方法を示すことができた。さらにシミュレーションによる同定精度の検証を行い、事前分布として、単に正規分布をもつ場合と比較した。その結果、提案した打ち切り正規分布をもつ事前分布を用いたほうが、システム同定結果のばらつきが少なくすぐれていることがわかった。 同定入力設計については、同定精度を満たしながら入力の大きさがなるべく小さくなる入力信号を求める方法について予備的な考察を与えた。問題はそのままでは非凸最適化となるために、凸最適化手法で計算する方法を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事前分布に関する考察については、一年目については計画通り進めることができた。また同定入力設計問題についても考察を始めることができた。これらの結果は開催されるはずであった国際会議において発表予定であったが、コロナ感染症のため会議が遠隔会議となったため、海外出張が取りやめとなった。その結果、計画していた海外研究者との討論ができなくなったため、研究が遅れることになった。一方、遠隔会議でシステム同定に関する話を新たに進めている研究者もおり、当初の予定が達成できなかった部分と相埋め合わせる関係になっている。以上、すべてが順調ということではないが、全般的に進捗は順調と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度以降もベイス推定法に基づいたシステム同定法について考察を進める。まず昨年度、海外出張が中止となったために連絡の取れなかったRoland Toth 博士、Marco Lovera 教授などの海外研究者との討論や意見交換については、研究の遅れている部分に相当する。今年度、メール等の方法で連絡を取りながら、遅れている部分を進めることにする。さらにこれまで得られている結果が線形パラメータ変化システムの同定法に結びつくように、考察を進めることにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症対応のために、ベルリンで開催予定であった国際学会が遠隔開催となったために、欧州の大学訪問をする計画が実行できなかった。国際学会参加と海外大学訪問については、2021年度以降、後ろ倒しで実施するものとし、それ以外の部分の計画をまず進める。
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