研究課題/領域番号 |
20K04538
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
小口 俊樹 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (50295474)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 制御工学 / 複雑系 / 同期 / 非線形系 / サンプル値系 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究では,サンプル値結合ネットワークシステムの同期問題について,同期を達成するために必要な結合に関する条件の導出を検討する.本課題を3つのフェーズに分けて実施し,本年度は,フェーズ1(サンプル値矩形パルス結合による2つの双方向結合非線形システムの同期問題)を中心に,研究を進めたが,フェーズ1だけでなく,結果としてフェーズ3(時変ネットワークにおけるサンプル値結合ネットワークシステムの同期問題)の内容についても一定の成果を得ることができた. まず,サンプル値矩形パルス結合はゼロ次ホールド入力をサンプル点間で0に切り替えることに相当することから,その双方向結合による同期問題はシステム間の結合の有無の状態に対応することから,2つのシステムの完全グラフネットワークと完全非連結グラフネットワークとが切り替わる時変ネットワークとしてみなすことができる.そこで,切り替え頻度及び平均零入力時間の概念を導入し,その場合の同期条件を導出した.その上で,結合システム数を一般化し,N個の結合システムに対して,すべての結合の有無を切り替えることにより,サンプル値矩形パルス結合による同期条件を導出している.
このことから,サンプル値矩形パルス結合の同期問題が,連結グラフと完全非連結グラフの切り替えによる時変ネットワークシステムの同期問題に帰着されたことから,これを発展させてフェーズ3の課題を検討した.平均滞留時間の概念を導入し,平均滞留時間に基づく時変ネットワークにおけるサンプル値結合ネットワークシステムの同期条件を導出した.フェーズ1の結果は,二つのモードを交互に切り替える場合に相当するが,フェーズ3で導出した結果は3つ以上のモードをランダムに切り替える場合に対しても適用可能である.
これらで得られた結果は,数値シミュレーションにより妥当性の検証を行った.今後,保守性の緩和を検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は,フェーズ1とフェーズ2(サンプル点間不変ネットワークにおける非周期サンプル値結合ネットワークシステムの同期問題)の理論構築を2020年度に始める予定であり,フェーズ3(時変ネットワークにおけるサンプル値結合ネットワークシステムの同期問題)の検討は,2021年度の第2四半期に開始することを予定していた.しかし,フェーズ1での解析方法の延長としてフェーズ3が解決できることから,フェーズ3を先に実施し,一定の結果を導出することができた.したがって,計画の順番を一部入れ替えることとなったが,全体としては概ね順調に進展していると考えらえる.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に,当初予定していたフェーズ3とフェーズ2の研究の順番を入れ替えたため,2021年度は第2四半期からフェーズ2(サンプル点間不変ネットワークにおける非周期サンプル値結合ネットワークシステムの同期問題に取り掛かり,主に理論構築を行う.フェーズ3の事変ネットワークにおけるサンプル値結合ネットワークシステムの同期制御問題については,2020年度に得られた条件の保守性について検討し,その条件の緩和についても検討を行う.また,これまでは無向グラフ(双方向結合)の下でこれらの検討を行ってきたが,順番を入れ替えた以外は予定通りあるいは多少予定よりも早く進んでいると考えられる点もあるので,計画を少し発展させ,有効グラフへの拡張も検討してみることを予定している.その一方で,COVID-19の感染拡大の影響を受け,海外渡航ができない状況にあるため,予定していた実験を実施できない可能性があるので,その場合には数値シミュレーションのみの検討に切り替える予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大による大学キャンパス施設の使用制限などがあり,当初予定していた計算機の購入を2020年度は見送ることとしたこと,参加を予定していた国際会議,国内会議がすべてオンラインまたは延期となり,参加費が大幅に減額され,さらに旅費が発生しなかったため,次年度使用額が発生した.2020年度に購入を予定していた計算機については,機器の見直しを行った上で2021年度に購入を行う予定である.また,2020年度に予定されていた国際会議が再延期となり2022年度開催となったものがあり,その参加費用等も考慮して計画的に執行する.
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