本研究では,多チャネルの超指向性を有するパラメトリックスピーカを用いたアクティブノイズコントローラ(以下ANC)により,一般的な家屋内での利用を可能とする騒音除去システムを構築し,その理論解析及び実機による消音性能について明らかにする。R3年度までは二次経路変動に対する消音性能の劣化に対して,二次経路の簡易推定法を開発し,経路変動に対する消音動作の安定化を実現した。また,制御音の音圧不足及び消音点移動に対して,複数のスピーカを用いた多チャネルシステムによる合成制御音の生成手法の構築を行った。R4年度は,本システムの要であるチャネル間音圧制御に必要となる,消音点での各チャネルの音圧計測を実現する4チャネル正四面体プローブのDSP実機システムへの適用を行い,そのシステム構成及び制御アルゴリズムの導出,シミュレーション及び実環境での各種性能評価を行った。概ね,理論およびシミュレーション結果と実機実験間の齟齬はなく良好な結果が得られたものの,幾つかの実用化に向けての改善点が確認できた。これに対して,チャネル間の位置関係変更に伴う新たなシステム構成の構築とそれに伴う制御アルゴリズムの改変等を行い,実用上で生じる環境変化に対しても消音性能の維持を可能とした。これらの成果を2022年8月の電気学会電子・情報・システム部門大会,同9月の日本音響学会秋季研究発表会,2023年3月の電気学会埼玉支所研究発表会,同3月の信号処理学会の国際会議(NCSP'23)にて発表を行った。また,R3年度末までに得られた二次経路の簡易推定法に関する成果をまとめたフルペーパー論文が2023年5月に電気設備学会論文誌へ掲載されることが決まっている。
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