研究課題/領域番号 |
20K04542
|
研究機関 | 佐世保工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中浦 茂樹 佐世保工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (20323793)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 出力零化制御 / ゼロダイナミクス / 熟練者の技巧的動作 / フラフープ運動 / トランポリン運動 / 実動作の運動解析 |
研究実績の概要 |
建設や土木,介護分野など体への負担が大きい職種への人型ロボットの導入が望まれるが,従来の軌道計画による運動制御では,熟練者と同等の運動を実現することは難しい.そこで本研究課題では,熟練者の技巧的動作に注目し,実動作の観察・計測をもとに生体力学の観点から運動の特徴を抽出することを試みる.そして,出力零化制御により得られた特徴量のみを陽に制御することで,結果として現れるゼロダイナミクスにより自然で滑らかな運動を生成することを目的としている.具体的な技巧的動作としては,実社会への応用が期待できるものとして,複雑な拘束を有するフラフープ運動や,外環境との相互作用を有するトランポリン運動を取り上げる.令和2年度においては,これら2つの運動の特徴を見極めるために,実際の運動の計測ならびに解析を行ってきた.
フラフープ運動の計測においては,実験室内に2m立方程度の計測空間を構築し,人間がその空間内でフラフープ運動する様子を4台の高速度カメラを用いて計測した.得られた三次元座標データから,運動における一般化座標と特徴となりうる座標を獲得することを試みた.中でもフラフープ運動の生成に一番重要と考えられる体幹部の運動について注目した.そして,時系列データからフープと体幹の転がり接触を考慮した上で体幹の運動とフープの自転・公転運動を取り出すことに成功した.
トランポリン運動の計測においては,体育館に5m立方程度の計測空間を構築し,直径3.6mのトランポリン上で人間が連続的に跳躍動作を行う様子を3台の高速度カメラを用いて計測した.得られた3次元座標データをもとに運動の解析を行った結果,跳躍と同時に腕を振り上げる動作とそのタイミング,トランポリンベッドに着地する際の膝関節の屈曲度合いが跳躍高さに影響を及ぼすこと,跳躍時の姿勢が安定した連続跳躍に影響を及ぼすことなどが分かった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,熟練者による技巧的動作を基にした人型ロボットの高速・高効率な運動生成を取り上げる.出力零化制御を行うことで現れるゼロダイナミクスによる結果としての運動を決定する出力関数の設定を議論するためには,単純な動作ではなく熟練者の技巧的動作の方がより運動の特性を引き出しやすいと思われる.そして,そのような運動を実現する制御方策の提案と,提案する手法の妥当性を確認するための検証実験を行うことを目的としている.
本年度においては,具体的な技巧的動作としてフラフープ運動とトランポリン運動を取り上げ,それぞれ人間が行う実際の運動の計測,得られた計測データから運動の解析を行った.十分な解析には至っていないが,それぞれの運動における特徴量の候補を見出すことが出来ていると思われる.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,運動計測の試行回数を増やし,運動の特徴量を明確にすることを行う.そして,出力零可制御における出力関数としてその特徴量を設定し,数値シミュレーションにより運動生成が行われるか確認する.数値シミュレーションにより,十分な制御結果を得ることに成功した後に,リンク系からなるロボットを設計・製作し,提案する制御手法の有効性を検証する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
非常に小額の残額が生じたため,次年度に繰り越すこととした.この金額は,翌年度分の助成金に合算した上で,当初の研究計画通りの支出を行っていく予定である.
|